スフェンタニル及びその類似体を含んでなる経皮送達システム
長時間にわたる持続性の疼痛、及び限られた継続時間の急性疼痛発症を治療するために使用することができる、独自の薬物動態プロフィールを有するスフェンタニル・パッチから、スフェンタニル及びその類似体を経皮送達するための方法及びシステムが記載されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行出願との関連
本出願は、2006年4月21日付けで出願された独国特許出願第10 2006 019 293.1号明細書、及び2007年2月26日付けで出願された米国仮特許出願第60/903,505号明細書に基づく優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、スフェンタニル及び関連類似体、例えばフェンタニルの経皮送達のための方法及びシステムに関する。本発明はまた、長時間にわたる持続性の疼痛、及び限られた継続時間の急性疼痛発症を治療するために使用することができる、独自の薬物動態プロフィールを有するスフェンタニル・パッチに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
スフェンタニルは、ヒト用の薬剤において有用性が証明されているフェンタニル化合物群における強力な合成オピオイドである。この薬物は、N−[4−(メトキシメチル)−1−[2−(2−チエニル)エチル]−4−ピペリジニル]−N−フェニル−プロパンアミドとして化学的に知られており、また下記化学構造:
【化1】
によって特徴付けられる。この薬物はフェンタニル化合物群において、フェンタニル、ロフェンタニル、アルフェンタニル、カルフェンタニル、及びレミフェンタニルを含む数多くの類似体を有している。クエン酸塩としての注射可能なスフェンタニル製剤が、Sufenta(登録商標)という商標のもとに全身麻酔のために米国内で承認されている。
【0004】
フェンタニル及びスフェンタニルの相対的な効力が文献に報告されているが、しかしその報告は一貫性がない。例えば米国特許第4,588,580号明細書には、スフェンタニルがフェンタニルよりも約15倍強力であることが報告されており、これに対してPCT国際特許出願公開第WO2006/047362号パンフレットには、スフェンタニルがフェンタニルよりも約7.5〜15倍強力であることが開示されている。
【0005】
経皮パッチは、皮膚に適用されると患者の皮膚を通して薬物を所定の速度で送達する、薬物を含有する付着性包帯である。最もシンプルなタイプのパッチは、可撓性裏層上に配置された薬物含有マトリックスを含んでなる付着性モノリスである。マトリックスを皮膚に直接に付着させることができるように、マトリックスは典型的には感圧粘着剤から形成されるが、しかしマトリックスは、非付着性材料から形成することもできる。この場合、付加的な付着層がマトリックスの皮膚接触面上に形成される。薬物がこれらのパッチから送達される速度は、人によって、また皮膚適用部位によって皮膚透過性に違いがあることにより変化しうる。より複雑なパッチは、リザーバ層と皮膚接触接着剤との間に薬物放出速度制御膜が配置された多層タイプ又は液体リザーバ・タイプのパッチである。この膜は、パッチからのin vitro薬物放出速度を低下させることにより、皮膚透過性の変動の影響を低減することができる。
【0006】
経皮パッチを通したオピオイドの送達は、慢性持続性疼痛の治療においてかなり有望である。なぜならば、これらのパッチは、再投与の必要なしに数日間にわたって持続的に鎮痛剤を送達することができるからである。フェンタニル及びその類似体の経皮投与法が数多くの特許明細書中に記載されている。例えば、米国特許第4,466,953号;同第4,470,962号;同第4,588,580号;同第4,626,539号;同第5,006,342号;同第5,186,939号;同第5,310,559号;同第5,474,783号;同第5,656,286号;同第5,762,952号;同第5,948,433号;同第5,985,317号;同第5,958,446号;同第5,993,849号;同第6,024,976号;同第6,063,399号及び同第6,139,866号の各明細書を参照されたい。米国特許第4,588,580号明細書には、スフェンタニルの皮膚中の溶解度が、フェンタニルの約25〜50%であることも開示されている。しかし、オピオイドに対する応答の患者間変動と結びついた、オピオイドに関する狭い治療指数が、これらの投与において極度の用心を命じる。
【0007】
フェンタニルの経皮パッチ送達は米国において、Janssen PharmaceuticaによるDuragesic(登録商標)ブランドのフェンタニル・パッチの規制認可に伴って、1990年に商品化されるようになった。製品は、面積に比例した量のフェンタニルを皮膚を通して全身循環に送達するいくつかのパッチ・サイズにおいて承認され、このような強力な鎮痛剤の一定の血漿中レベルを必要とする患者の間で絶大な人気があることが判っている。Duragesic(登録商標)は、3日間にわたって患者に適用され、そして慢性持続性疼痛の治療のために使用される。Duragesic(登録商標)フェンタニル・パッチは、3日ごとに取り外し、そして新しいパッチに置き換えるように意図されており、また、投与量が経時的に増大すること、そして突出痛に対処するために他の鎮痛剤を併用することが考えられる。パッチは、脂肪組織内に薬物を蓄積させ、そして後になって脂肪組織から循環内への逆薬物放出をもたらす高い親油性;皮膚蓄積作用として知られる現象、を含む数多くの欠点を負っている。臨床において、このことは、投与量を調節する前に最大定常状態血中濃度に達するのを保証するように、投与量を漸増する前にパッチを数回適用しなければならないので重要である。
【0008】
これまで、定期的に交換するように設計された経皮オピオイド・パッチは、パッチの単回適用過程全体にわたって定常的な量の薬物をゆっくりと送達すべきであると考えられており、そして単回投与過程全体にわたるこの低速且つ定常的な送達は、繰り返しされるパッチ適用過程全体にわたって臨床的に有意義な血漿中濃度不変性を保証するために必要であると考えられている。この考えは、Durect CorporationによるPCT国際特許出願公開第WO2006/047362号パンフレットにおいて最も明らかである。このパンフレットは、最初の24時間のパッチ適用過程全体にわたる低速のスフェンタニル取り込み、及び次の連続した6日間にわたるほとんど一定のスフェンタニルの血漿中レベルを示す。Durectの出願によれば、パッチは、単一パッチの適用から最大7日間にわたって実質的にゼロ次の動態を達成した。実施例には、15.4重量%の高MWポリイソブチレン(Oppanol B100)、22重量%の低MWポリイソブチレン(Oppanol B12)、48.5重量%のポリブテン、6.5重量%のCAB−O−Sil、及び7.7重量%のスフェンタニルを含有するパッチが記載されている。PCT国際特許出願公開第WO2006/047362号パンフレットに報告されたDurectパッチから得られる血漿中レベルは、本明細書では図6及び7にプロットされている。
【0009】
従来のスフェンタニル・パッチは、Alza CorporationによるPCT国際特許出願公開第WO02/074286号パンフレットにも記載されており、このパンフレットは、パッチ中のスフェンタニル濃度が増大すると、比例した量のスフェンタニル透過を呈し、そして特に低投与量の場合、最初の36時間又は72時間にわたるパッチ投与過程全体にわたってほとんど定常的なスフェンタニル・フラックス速度を呈する。実施例には、ポリアクリレート・マトリックス中に、任意には透過促進剤とともに、0.25、0.5、0.75、1.0又は1.1mgのスフェンタニル(2、4、6、8、及び9重量%のスフェンタニルに相当)を含有する2.54cm2パッチが記載されている。Alza出願の図4には、種々のスフェンタニル濃度におけるパッチからのin vitro皮膚フラックス速度が報告されている。
【0010】
Alza刊行物によれば、そこに記載されたスフェンタニル・パッチは、約0.1〜約10mcg/(cm2・時間)の標準化フラックス速度、及び約0.04〜約10ng/(ml・(mg/時間))の正規化Cmax(Cmaxを公称in vivoフラックス速度で割り算した値として定義される)を達成することができる。この刊行物には、いかに速くスフェンタニル・パッチがCmaxに達することになるかは開示されておらず、約24時間以内でCmaxに達するフェンタニル・パッチが開示されている。
【0011】
オピオイド・パッチの重大な問題は、パッチの流用、及びパッチが取り除かれ廃棄された後のオピオイド残余物の不正使用である。一定の送達速度に当てられた従来技術の焦点は、パッチ内のフラックス速度と薬物濃度との関係から、この残余物を最小限にしようとする努力を妨げている。薬物フラックスの著しい変化を防止するためには、パッチ投与過程全体を通して、高い薬物濃度が典型的にパッチ内に存在しなければならない。PCT国際特許出願公開第WO2006/047362号パンフレット(飽和を上回るスフェンタニル濃度を報告している)を参照されたい。必要とされるのは、パッチが取り外された後パッチ中に多量のスフェンタニル残留物を残すことなしに、パッチの繰り返しの適用過程全体にわたってスフェンタニル血漿中濃度中に臨床的に有意義な不変性、及び臨床的に有意な疼痛コントロールを提供するパッチを提供することである。
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
従来技術の教示とは異なって、本発明者は、パッチの平均送達速度に対して比較的短い時間枠内で高いCmaxを達成することにより、--単一パッチから少なくとも3日間の期間にわたって--臨床的に有意な持続的鎮痛を達成するためのスフェンタニル及びその類似体を送達するパッチを開発した。具体的には、パッチは、約12時間以内のパッチ適用でCmax(最大血漿中濃度)の少なくとも80%の血漿中濃度に達し、そしてなおも、少なくとも3日間にわたって持続的鎮痛を提供することができる。短い時間枠でパッチ中の活性成分の大部分を迅速に放出することにより、これらのパッチは長期間及び短期間の鎮痛効果を提供する一方、(1)パッチ内に必要とされる活性成分の量を少なくし、そして(2)パッチが除去され廃棄されたときのパッチ中の残余薬を低減する。
【0013】
血流中への活性成分のこのような迅速且つ効率的な放出は、いくつかの動態変数によって特徴付けることができる。1実施態様の場合、これらのパッチは、3日間の投与期間、15又は20ng/(ml・(mg/時間))を上回る、3日間にわたる正規化Cmax(Cmaxを薬物フラックスで割り算した値として定義される)によって特徴付けられる。別の実施態様の場合、パッチは、0.01又は0.03ng/(ml・cm2)を上回る標準化Cmax(Cmaxをパッチの表面積で割り算した値として定義される)によって特徴付けられる。さらに別の実施態様の場合、パッチは、約18時間以下のTmax、又は約12時間以下の80% Tmax(すなわち80% Cmaxに達するために必要とされる時間)によって特徴付けられる。
【0014】
多数の投与量研究が着手され、そして定常状態の薬物動態特性が分析されるまで明らかにはならなかった本発明の別の特徴は、平均定常状態血漿中濃度と定常状態公称フラックスとの関係である。静脈内輸注研究を用いた理論上の計算は、1mcg/時間が10pg/ml未満のスフェンタニル血漿中濃度をもたらす(実施例9参照)ことを予測し、単回投与生物利用可能性試験がこれらの予想と一致するのに対して、本発明者は、定常状態では、パッチが15pg/mlを上回る平均血漿中濃度を達成することを発見した。従って、別の実施態様の場合、パッチは、1.5×10-5時間/mlを上回る、公称フラックスに対する平均血漿中濃度の比によって特徴付けられる。
【0015】
或いは、当該パッチからの活性成分の迅速な送達は、下記薬物動態パラメータ(好ましくは3日間の適用期間にわたって定義される)のうちの1つ又は2つ以上によって特徴付けることもできる。
・パッチ内の活性成分の量、及び処方適用期間全体にわたって患者に最終的に送達される活性成分の量に対して高いCmax;
・パッチ内の活性成分負荷量に対して高い、処方適用期間の定常状態平均血漿中濃度;
・約1.5を上回る、Cminに対するCmax血漿中濃度の比(CminはCmaxに達した後に同定される);及び/又は
・特に商業的なDuragesic(登録商標)製品と比較して低い、血漿中濃度の変動係数。
【0016】
パッチは典型的には、既存の静脈内又は経口オピオイド薬剤の代替物として、オピオイド治療を既に受けている患者に適用される。このように例えば、約60〜約134mg/日の経口モルヒネを受容している患者には、最初は(処方投与期間全体にわたって平均して)約3.5mcg/時間のスフェンタニルを送達するパッチが処方されることになる。パッチ適用期間中に患者が付加的な疼痛コントロールのための補足的なオピオイドを自己投与する場合には、パッチ投与量は、経口モルヒネ45mg/日に対してスフェンタニル送達量の増加1.75mcg/時間の比率を用いて、補足的なオピオイドの一日投与量に基づいて増大させることができる。
【0017】
さらに別の実施態様は、これらの驚くべき薬力学を有するパッチを形成するために使用される特定の製剤に関する。こうして1実施態様において、本発明は、スフェンタニル又はその類似体のうちの1種を含有するパッチの主要マトリックス成分としてポリイソブチレンを使用することに関し、この場合、マトリックスは50重量%を上回るポリイソブチレンを含んでなり、ポリイソブチレンにおいて、低MWポリイソブチレンと高いMWポリイソブチレンとの比は、好ましくは2:1、3:1、又は4:1よりも大きく、そして好ましくは20:1よりも小さい。別の実施態様の場合、本発明は、刺激低減剤、例えばグリセロリン酸カルシウムを製剤中に使用することに関する。
【0018】
本発明のさらなる利点が、下記の説明において一部示され、また一部は説明から明らかになるか、又は発明の実施によって学習することができる。本発明の利点は、添付の特許請求の範囲において具体的に指摘された要素及び組み合わせによって実現され達成される。言うまでもなく、前記全般的な説明、及び下記詳細な説明の両方は例示的且つ説明的にすぎず、特許請求の範囲で主張した本発明を限定するものではない。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明は、本発明の好ましい実施態様の下記詳細な説明及びそこに含まれる実施例を参照することにより、より容易に理解することができる。
【0020】
用語の定義及び使用
本明細書中及び特許請求の範囲に使用される単数形は、文脈が明らかに他の意味を示さない限り複数形の指示対象を含む。こうして、例えば「成分」に言及するときには、これは複数の成分混合物を含み、「活性医薬剤」に言及するときには、これは2種以上の活性医薬剤を含む、といった具合である。
【0021】
特に断りのない限り、最終生成物(すなわち、パッチを形成するために使用される製剤と対立するものとしての、パッチ)に関連して本明細書中に使用される「重量%」という用語は、対象成分が関与する総乾燥重量のパーセンテージを意味する。実際には、パッチは典型的には、調製に使用される溶媒のいくらかを維持するので、この理論値は実験値と異なる場合がある。
【0022】
本明細書中に使用される「薬物」という用語は、スフェンタニル及びその類似体を意味し、スフェンタニル、フェンタニル、ロフェンタニル、アルフェンタニル、カルフェンタニル、及びレミフェンタニルなど、及び医薬的に許容し得るこれらの塩及びエステルを含む。好ましい薬物はスフェンタニルであり、そしてこれは好ましくは塩基分子として使用される。
【0023】
本明細書中に使用される「サブ飽和パッチ」という用語は、薬物の濃度がその溶解限度を下回るパッチを意味する。マトリックス層は典型的には、単一相高分子組成物を含んでなり、薬物及び全ての他の成分はマトリックス中のこれらの飽和濃度以下の濃度、そして好ましくはこれらの飽和濃度未満の濃度で存在する。
【0024】
本明細書中に使用される「単一相高分子組成物」という用語は、薬物がポリマー中に可溶化され、そしてマトリックス中のその飽和濃度以下の濃度、そして好ましくはこれらの飽和濃度未満の濃度で存在し、ポリマーと組み合わされた活性成分は単一相を形成する。
【0025】
「第1スフェンタニル・パッチ・システム」は、分析されるべき第1のスフェンタニル・パッチ・システムを意味するのであって、スフェンタニル治療計画中に個体に投与されるべき最初のスフェンタニル・パッチ・システムを意味するものではない。このように、例えば「第1スフェンタニル・パッチ・システム」は、個体に適用される第1、第2、第3などの逐次的なシステムを意味することができる。この文献が個体に適用されるまさに最初のスフェンタニル・パッチ・システムに言及しようとするときには、これは「初期」パッチ・システム又は「順序において第1の」パッチ・システムと呼ばれる。同様に、「第1」期間は、これまでで最初の期間を意味するとは限らない。むしろ最初の期間に言及するためには、「初期」又は同様の意味を持つ他の文言が使用されることになる。
【0026】
考察
上で論じたように、本発明は、スフェンタニル及びその類似体の経皮送達のため、好ましくは疼痛の治療及び持続的鎮痛の提供のための方法及びパッチを提供する。パッチは好ましくは、2、3又は4日以上、最大7日間の期間にわたって鎮痛を誘発してこれを維持するのに十分な速度及び量で薬物を、これを必要とする患者に送達する。1実施態様の場合、疼痛は急性である。1実施態様の場合、疼痛は慢性である。さらに別の実施態様の場合、疼痛は持続性の中度から重度の慢性疼痛である。
【0027】
パッチは典型的には、保護可撓性カバーと、該保護カバーとは反対側に付着性表面を有する中間活性成分層と、該付着性表面に隣接する取り外し可能なカバーとを含んでなる。皮膚に適用されると、活性成分が皮膚内に、そして皮膚を通って拡散し、ここで活性成分は血流中に吸収されることにより全身性鎮痛効果をもたらす。鎮痛の開始は種々のファクター、例えば皮膚中の薬物の溶解性及び拡散性、皮膚の厚さ、皮膚適用部位内部の薬物濃度、及びマトリックス層内の薬物濃度などに依存する。患者が初期適用8時間以内で十分な効果を経験することが好ましい。しかし、これは初期適用時にのみ重要である。繰り返し順次適用されると、パッチの適用部位における残留薬物が、新しいパッチに由来する薬物が新しい適用部位内に吸収されるのとほぼ同じ速度で身体によって吸収される。従って、患者は鎮痛のいかなる中断も被らないはずである。
【0028】
連続的な鎮痛が望ましい場合、消耗したパッチは取り除かれ、新しいパッチが新しい部位に適用される。例えばパッチ又はパッチ・システムは、持続的な鎮痛を提供するために、投与期間の終わりに順次取り外され、そして新しいパッチ又はパッチ・システムで置き換えられる。新しいパッチから新しい適用部位内への薬物の吸収は通常、パッチの前回適用部位内部の残留薬物が身体によって吸収されるのと実質的に同じ速度で行われるので、血中レベルは実質的に一定のままとなる。加えて、投与量を経時的に増大させること、そして突出痛に対処するために他の鎮痛剤を併用することが考えられる。
【0029】
「パッチ・システム」という用語は、投与期間中に適用される1つ又は複数のパッチを意味するために使用される。「パッチ・システム」は、同時投与されるいくつかのベース・パッチから形成されてもよく、或いはベース・パッチの表面積及び薬物送達速度の倍数に等しい表面積及び薬物送達速度を有する単一のより大きいパッチであってもよい。換言すれば、ベース・パッチの総表面積はベース表面積として定義することができ、また、経皮パッチからの送達速度がパッチの総表面積に対して線形的に相関するので、逐次的に大きくなるパッチ・システムは、n・(ベース表面積)の表面積を有することになる。nは整数2〜約10である。本発明のベース・パッチ・システムは好ましくは、最小有効血漿中濃度を上回るか又はこれに等しい平均定常血漿中濃度を達成するように、或いは、定常状態の血漿中濃度が最低有効レベルを下回らないことを保証するように設計される。
【0030】
ベース・パッチのベース送達速度は典型的には、約2.0〜約7.0mcg/時間、又はその間の任意の速度となる。種々の実施態様の場合、ベース・パッチのベース送達速度は、約2.5〜約6.0mcg/時間、約4.0〜約5.0mcg/時間、又は約3.0〜約3.5mcg/時間となる。或いは、パッチは、約2.0±0.3、2.5±0.3、3.0±0.3、3.5±0.3、4.0±0.3、4.5±0.3、5.0±0.3、又は5.5±0.3mcg/時間のベース送達速度を有するものとして記述することもできる。別の代わりの実施態様の場合、パッチは、約2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、又は5.5mcg/時間、場合により±0.1、0.2又は0.3mcg/時間のベース送達速度を有するものとして記述される。逐次的に大きくなるパッチ・システムは、n・(ベース送達速度)に等しい送達速度を有することになり、nは2〜約10の整数である。
【0031】
パッチ構造
本発明のパッチの構造は種々様々であることが可能であるが、好ましいパッチ構造が図1及び2に示されている。図1及び2に示すように、パッチ構造は、皮膚に適用されるパッチ1と、適用前にパッチから取り外される取り外し可能な保護層/剥離ライナー2とを含んでなる。パッチ1は好ましくは、付着層又はマトリックス3及び非反応性カバー層4を含んでなる。活性成分は付着層又はマトリックス内部に組み込まれており、そして剥離ライナー2を取り外すことにより、付着層3を露出させ、この付着層は次いで皮膚に適用することができる。パッチ1及び取り外し保護層2を含むパッチ構造は好ましくは、耐光性且つ耐湿性であるフォイル・パッケージ内に包装される。パッチが成すことができる他の構造は、付加的な層、例えば米国特許第6,190,690号明細書においてParkによって教示されたような、薬物マトリックスと剥離ライナーとの間の付着層、又は薬物マトリックスとカバー層との間のプライマーを有する構造を含む。
【0032】
活性成分のためのベース・パッチ(すなわち皮膚に適用される構造)は任意の形状を成すことができるが、しかし好ましくは、表面積約1.0cm2〜約25cm2、最も好ましくは約1.5cm2〜約5又は10cm2の方形の形状である。マトリックス層の厚さは好ましくは、約0.10〜約2.0mg、約0.15〜約0.50mg、又は約0.20〜約0.40mgがパッチのそれぞれ1平方センチメートル内に存在する(最も好ましくは約0.25mg/cm2)ように設定される。マトリックス層の厚さは約5〜約40milであってよく、また好ましくは、製造中の湿式被着時に、約10〜約25milである。
【0033】
非反応性カバー層4は、パッチの着用可能性において重要な役割を演じる。経皮システムは人体の可動部位に適用されるので、高度の可撓性が必要である。また、カバー層4が、皮膚を閉塞させないように良好な水蒸気透過性を有することも好ましい。カバー層4に適した材料は、ポリエチレンから成るプラスチック・フィルム、ビニルアセテート樹脂、エチレン/ビニルアセテート・コポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリプロピレン、金属フォイル、織布、不織布、布地、及び商業的に入手可能な積層体を含む。裏当て材料の重量は一般に、約2.0〜約2.5mg/cm2である。二方向弾性材料、例えばポリプロピレン不織布が特に有用である。
【0034】
保護層2は好ましくは、マトリックス層に対して不活性であり、そしてマトリックス層から容易に分離することができる材料から成るシート状材料である。保護層材料の例は、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及び紙など、及びこれらの組み合わせを含む。
【0035】
薬物動態
本発明のパッチを特徴付ける最も有用な方法の1つは、これらの薬物動態によるものである。特に断りのない限り、ここで言及される薬物動態パラメータは、初期パッチ・システム又は定常状態で適用されるパッチ・システムの薬物動態を記述するために使用することができる。さらに、(±n)として表現される変動性は任意である。
【0036】
図面から明らかなように、本発明のパッチのスフェンタニル負荷がより低いとしても、本発明パッチは極めて迅速にCmaxに達し、競合パッチよりも著しく高いCmaxに達し、そして競合パッチよりも高い平均血漿中濃度を有する。他のパッチ・システムのベースを形成することもできる0.625mgのスフェンタニルを含有するベース2.5cm2パッチは、例において記載したように、最初の72時間の間、大部分が最小有効レベル(スフェンタニルの場合30pg/ml)と、平均有効レベル(スフェンタニルの場合60pg/ml)との間(これらのレベルから10、20又は40%超外れることはない)に制限されたオピオイド濃度をもたらす。
【0037】
「Cmax」という用語は、本発明の方法に従って投与されたときの薬物のピーク血中又は血漿中濃度を意味する。Cmax(80%)という用語は、Cmaxに達する前に、その薬物のCmaxの80%に達する薬物の血中又は血漿中濃度を意味する。1実施態様の場合、本発明のベース・スフェンタニル・パッチは、約45、50、55、60、65、70、又は75pg/ml(±20%)の、最初の72時間の初期投与中のCmaxを有するものとして記述することができる。定常状態では、本発明のベース・スフェンタニル・パッチは、約55、60、65、70、75、80、85又は90pg/ml(±20%)のCmaxを有するものとして記述することができる。より大きいパッチ・システムが典型的には、ベース・スフェンタニル・パッチによって達成されるCmaxの倍数、すなわちn・(Cmax−base)に達するように設計される。nは整数2〜10である。別の実施態様の場合、ベース・スフェンタニル・パッチは、数学的に可能な終点の任意の組み合わせにおいて、最初の72時間の初期投与中に、約45、50、55又は60pg/ml超であり且つ約85、80、75又は70pg/ml未満であるCmaxを有するものとして記述される。定常状態では、ベース・スフェンタニル・パッチは、数学的に可能な終点の任意の組み合わせにおいて、約55、60又は65pg/ml超であり且つ約90、85又は80pg/ml未満であるCmaxを有するものとして記述することができる。
【0038】
本明細書中に使用される「標準化Cmax(pg/ml-cm2)」という用語は、システムの活性薬物送達領域、例えばマトリックス層の領域の、単位面積(cm2)当たりのCmax(pg/ml)を意味する。1実施態様の場合、スフェンタニル・パッチは、初期投与中又は定常状態時に、20.0、25.0、27.5、30.0、32.5、35.0又は40.0pg/ml-cm2(±20%)の標準化Cmaxを有するものとして記述される。別の実施態様の場合、スフェンタニル・パッチは、数学的に可能な終点の任意の組み合わせにおいて、初期投与中又は定常状態時に、約20.0、25.0、27.5、30.0、32.5又は35.0pg/ml-cm2を上回り、且つ約42.5,40.0、37.5、又は35.0pg/ml-cm2未満である標準化Cmaxを有するものとして記述される。
【0039】
本明細書中に使用される「正規化Cmax(pg/ml-(mcg/時間))」という用語は、Cmax(pg/ml)を、定義された期間全体にわたる平均薬物フラックス(mcg/時間)で割り算したものを意味する。1実施態様の場合、スフェンタニル・パッチは、パッチが最初に又は定常状態で適用されたときに、10.0、11.0、12.5、14.0、15.5、17.0、18.5、20.0、21.5、23.0、24.5又は26.0pg/ml-(mcg/時間)(±5、10又は20%)の正規化Cmaxを有するものとして記述される。別の実施態様の場合、スフェンタニル・パッチは、数学的に可能な終点の任意の組み合わせにおいて、パッチが最初に又は定常状態で適用されたときに、約10.0、11.0、12.5、14.0、15.5、17.0、又は18.5、20.0、又は21.5pg/ml-(mcg/時間)を上回り、且つ約20、25、30又は35pg/ml-(mcg/時間)未満である正規化Cmaxを有するものとして記述される。
【0040】
別の主な実施態様の場合、本発明は、パッチからの薬物の定常状態フラックスに対する、定常状態におけるパッチに関して観察される平均血漿中濃度に基づいて特徴付けられる。輸液速度ならば1mcg/時間のフラックスが10pg/ml未満の定常状態血漿中濃度をもたらすことを示唆するであろうが、本発明者は、本発明のパッチによる約3.5mcg/時間の定常状態送達量が、約53.8pg/mlの定常状態血漿中濃度をもたらすことを発見した。すなわち、本発明のパッチは、1.0×10−5hr/ml、1.2×10−5時間/ml、1.4×10−5時間/ml、又は1.5×10−5時間/mlを上回る、公称(すなわち定常状態)フラックスに対する平均血漿中濃度の比をもたらす。
【0041】
さらに別の実施態様の場合、パッチは、最大血漿中濃度に達するのにかかる時間、又は最大血漿中濃度の80%に達するのにかかる時間によって特徴付けられる。種々の実施態様の場合、パッチ又はパッチ・システムは、約24、21、18又は15時間又はそれ未満でTmaxに達するか、又は約22、18、15又は12時間又はそれ未満で80%Tmax(すなわち80%Cmaxに達するのに必要とされる時間)に達するものとして記述される。
【0042】
本発明のパッチの特に重要な特徴は、血漿中濃度の素早い発現、そしてパッチが取り外されたときの血漿中濃度の素早い減少である。皮膚から取り外されたときに血漿半減期約17時間を呈する商業的Duragesicパッチとは対照的に、本発明のパッチは、平均血漿半減期12又は10時間未満、又は8〜11、又は9〜10時間を呈する。フロントエンドでは、50%Tmaxは好ましくは10時間又は8時間未満で達成される。
【0043】
別の実施態様の場合、パッチは、パッチ中の活性成分の量に対して高いCmaxによって特徴付けられる。従って、1実施態様の場合、パッチは、約50〜約200pg/ml・mg、約70〜約150pg/ml・mg、又は約100〜約135pg/ml・mgの負荷Cmax(すなわちパッチ中のスフェンタニル量に対するCmaxの比)によって特徴付けられる。別の実施態様の場合、本発明は、80、90、100、110、120、130又は140pg/ml・mg(±20%)の負荷Cmaxによって特徴付けられる。
【0044】
別の実施態様の場合、パッチは、処方適用期間全体にわたって患者に最終的に送達される活性成分の量に対して高いCmaxによって特徴付けられる(「放出負荷Cmax」−パッチ重量の低減により測定した、パッチから放出されたスフェンタニル量に対するCmaxの比として定義される)。従って1実施態様の場合、パッチは、約100〜約400pg/ml・mg、約140〜約300pg/ml・mg、又は約200〜約270pg/ml・mgの放出負荷Cmax(pg/ml・mg)によって特徴付けられる。別の実施態様の場合、本発明は、160、180、200、220、240、260又は280pg/ml・mg(±20%)の放出負荷Cmaxによって特徴付けられる。
【0045】
別の実施態様の場合、パッチは、パッチ内の活性成分負荷量に対して高い、処方適用期間の平均血漿中濃度によって特徴付けられる。種々の実施態様の場合、パッチは、4×10−8、5×10−8、6×10−8、7×10−8、4×10−8ml−1よりも高い、平均血漿中濃度をパッチ内のスフェンタニル負荷で割り算した値を達成する。
【0046】
さらに別の実施態様の場合、パッチは、処方投与期間全体にわたる最小血漿中濃度に対する最大血漿中濃度の比によって特徴付けることができる。CminはCmaxに達した後に同定される。種々の実施態様の場合、パッチは、単一パッチ・システムのための48時間、72時間、また96時間の投与期間にわたって、約1.5、1.6、1.7、1.8、1.9又は2.0より高く、且つ約3.0又は2.5未満であるCmax:Cmin比によって特徴付けられる。
【0047】
別の実施態様の場合、パッチは、特に商業的なDuragesic(登録商標)製品と比較して低い、最大血漿中濃度の変動係数によって特徴付けられる。種々の実施態様の場合、Cmaxの変動係数は、40%、30%、又は25%未満である。
【0048】
本発明の好ましい実施態様は、約2、3又は4日間にわたって適用されたときの、本発明の実施例において記載されたパッチに対して生物学的に等価のパッチである。したがって、例えば、1実施態様において、本発明は、基準パッチに対して生物学的に等価のパッチであって、該基準バッチが:a)1.0重量部の高分子量ポリブテン、5.0重量部の低分子量ポリイソブチレン、及び2.0重量部のポリブテンをヘキサン中に溶解することにより、付着性混合物を形成し;b)エチルアセテート中に0.25重量部のスフェンタニル塩基を溶解することにより、薬物混合物を形成し;c)上記薬物混合物中に0.25重量部のグリセロリン酸カルシウムを混合することにより、CGP混合物を形成し;d)上記付着性混合物と上記CGP混合物とを混合することにより混合液を形成し、そして該混合液を1時間にわたって攪拌し;e)該混合液を、約0.25mg/cm2のスフェンタニル濃度で剥離ライナー上にコーティングし;f)該コーティングされたライナーを乾燥させ;そしてg)該乾燥済みのコーティングされたライナーに裏当てフォイルを被着する、ことを含んでなる方法によって形成されたマトリックス・パッチである、パッチを提供する。
【0049】
一般に、標準的な生物学的等価性研究が、少数のボランティア、通常は24〜36名の健常な正常成人でクロスオーバー様式で行われる。試験生成物及び基準生成物の単回投与量が投与され、薬物の血中又は血漿中レベルが経時的に測定される。これらの濃度−時間曲線の特徴、例えば血中又は血漿中薬物濃度−時間曲線下面積(AUC)、薬物のピーク血中又は血漿中濃度(Cmax)、及び/又はピーク血漿中濃度までの時間(Tmax)が、この後でより詳細に説明するように統計的処置によって調べられる。一般に、生物学的等価性研究からの対数変換パラメータ(AUC及びCmax)を使用して、2つの片側統計検定が行われる。2つの片側試験は0.05有意性水準で行われ、90%信頼区間が計算される。試験製剤/組成物及び基準製剤/組成物は、薬物動態パラメータの平均(試験/基準生成物)値の比周辺の信頼区間が下端では80%以上であり、且つ上端では125%以下である場合には、生物学的等価と考える。
【0050】
薬物投与速度がパッチのサイズに対して比例する2種の異なる生成物を比較するときには、薬物のピーク血中又は血漿中濃度(Cmax)は、生物学的等価性を立証するために、システムの活性薬物送達領域の単位面積当たりで標準化される。異なる単位面積当たりの薬物投与速度を有する2種の異なる生成物を比較するときには、生物学的等価性を立証するために投与された薬物の速度を基準として、薬物のピーク血中又は血漿中濃度(Cmax)を正規化することが必要である。BE処置に関する更なる詳細は、“Statistical Procedures for Bioequivalence Studies Using a Standard Two-Treatment Crossover Design”と題されるFDAの1992年7月付けのGuidance Documentに見いだすことができる。この内容を参考のために本明細書中に引用する。
【0051】
投与量
特に好ましい実施態様において、本発明の治療方法は、オピオイド耐性である患者において開始され、そしてパッチは、患者に1日に投与されるオピオイド投与量(すなわちオピオイド需要量)に基づいて投与される。従って例えば、患者が現在約90mg/日の経口モルヒネを服用しているならば、スフェンタニル投与量約3.5mcg/時間で患者に投与開始することが望ましい。この点から、スフェンタニルの置換は本質的に線形の関係となる。従って、1実施態様の場合、本発明の方法は、n・90mg/日の経口モルヒネに対して等効力の既存オピオイド需要を有する患者において開始され(すなわちこの患者は、約90mg/日の経口モルヒネ、又はこの倍数に対して等効力のタイプ及び量のオピオイドを受容している)、そして上記第1パッチ・システムはn・(6.0±0.5)、n・(6.5±0.5)、n・(5.0±0.5)、n・(4.5±0.5)、n・(4.0±0.5)、n・(3.5±0.5)、n・(3.0±0.5)、又はn・(2.5±0.5)mcg/時間のスフェンタニルを送達し、nは整数1〜12である。或いは、n・90mg/日の経口モルヒネに対して等効力の既存オピオイド需要を有する患者に、最初は、n・(1.0〜8.5)、n・(2.5〜4.0)、又はn・(4.0〜5.5)mcg/時間のスフェンタニルを送達するパッチ・システムが処方されてよく、nは整数1〜12である。
【0052】
もちろん、正確に90mg/日の経口モルヒネ又はその倍数が患者に常に処方されるわけでなく、この場合、Duragesic(登録商標)のための処方情報から導き出した下記表を用いて、換算が行われてよい。
【0053】
【表1】
【0054】
言うまでもなく、多くの患者が、パッチ・システムに切り換えたときに、経口モルヒネ以外のオピオイドによる現行の治療を受けることになり、パッチ・システムの投与量は、同じ鎮痛度を与えるのに必要な相対オピオイド投与量を示す等効力チャートから導き出すことができる。Duragesic(登録商標)のための処方情報に見いだされる、認定された等効力チャートを下に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
このように、例えば経口オキシコドンは、経口モルヒネの2倍の効力があり、そして45mg/日の経口オキシコドンを受容する患者には、約3.5mcg/時間を送達するパッチ・システムが最初に好ましくは送達されることになる。この量は、90mg/日の経口モルヒネを受容する患者が好ましく受容するのと同じ投与量である。
【0057】
前記治療方法のいずれにおいても、言うまでもなく、第1パッチ・システムは極めて多くの場合、長期間にわたって持続的鎮痛剤を送達するための一連の治療における最初のものとなるに過ぎない。従って、第2パッチ・システムが第1期間の終了後に適用され、第1パッチ・システムが取り外されると、本発明はさらに、前記第1期間後に、少なくとも2又は3日の第2期間にわたって、前記患者の皮膚に第2パッチ・システムを付着させることを提供し、前記第2パッチ・システムは第2Cmaxを実証し、そして前記第1及び第2のパッチ・システムは同一の組成及びサイズによって定義される。第1Cmaxと第2Cmaxとは好ましくは同じであるか又は類似しており、また種々の実施態様において、第1Cmax値と第2Cmax値とは、20%、15%、10%又は5%以下だけ変化する。或いは、第1Cmax値と第2Cmax値とは、5%、10%、15%又は20%以上だけ変化してよい。
【0058】
1実施態様の場合、活性成分の投与量は、患者が第1適用期間中に不十分な疼痛コントロールを経験する場合、第1パッチ投与後に、増量する方向に調節される。このような実施態様の場合、第2パッチ・システムは前記第1パッチ・システムよりも高いin vivoフラックス速度を有することになる。付加的なスフェンタニル投与量はしばしば、第1適用期間中に患者によって摂取された45mg/日経口モルヒネ毎に1.75mcg/時間スフェンタニル(±0.25mcg/時間)の比を用いて、又は等効力のオピオイド投与量を用いて、第1期間中に患者によって摂取された補足的オピオイド量に基づいて計算することができる。従って、別の実施態様の場合、本発明の方法は、第1期間中に不十分な疼痛コントロールを経験する患者によって特徴付けられ、さらに:(a)前記第1期間中にn・45mg/日経口モルヒネに対して等効力の補足的オピオイド投与量を投与し、そして(b)前記第1システムのin vivoフラックス速度に等しいin vivoフラックス速度、及びn・(1.75±0.25)mcg/時間(nは整数1〜5である)のスフェンタニルを有する第2パッチ・システムを投与する、ことを含んでなる。
【0059】
別の実施態様の場合、活性成分の投与量は、患者が第1及び第2適用期間中に不十分な疼痛コントロールを経験する場合、初期及び第2又は後続のパッチ投与後までは、増量する方向に調節されることはない。このような実施態様の場合、第2パッチ・システムは前記初期パッチ・システムと同じサイズ及び組成を有することになる。初期投与量が第2投与後に不十分であり続ける場合には、付加的なスフェンタニルを有する第3パッチ・システムが適用されてよい。付加的なスフェンタニル投与量はしばしば、第2適用期間中に患者によって摂取された45mg/日経口モルヒネ毎に1.75mcg/時間スフェンタニル(±0.25mcg/時間)の比を用いて、又は等効力のオピオイド投与量を用いて、第2期間中に患者によって摂取された補足的オピオイド量に基づいて計算することができる。従って、別の実施態様の場合、本発明の方法は、初期期間中に不十分な疼痛コントロールを経験する患者によって特徴付けられ、さらに:(a)前記第2期間中にm・45mg/日経口モルヒネに対して等効力の補足的オピオイド投与量を投与し、そして(b)前記第1システムのin vivoフラックス速度に等しいin vivoフラックス速度、及びm・(1.75±0.25)mcg/時間(mは整数1〜5である)のスフェンタニルを有する第3パッチ・システムを投与する、ことを含んでなる。
【0060】
パッチ組成
上記のように、マトリックスは好ましくは、少なくとも3日間にわたってヒトにおいて鎮痛を誘発してこれを維持するのに十分な量の活性成分を含有する単一相高分子組成物を含んでなる。好ましい実施態様の場合、マトリックス層は約0.05〜約1.75mg/cm2のスフェンタニル;好ましくは約0.07〜約1.50mg/cm2のスフェンタニル;好ましくは約0.08〜約1.25mg/cm2のスフェンタニル;より好ましくは約0.09〜約1.0mg/cm2のスフェンタニル;より好ましくは約0.1〜約0.75mg/cm2のスフェンタニル;より好ましくは約0.12〜約0.5mg/cm2のスフェンタニル;及びさらにより好ましくは約0.2〜約0.4mg/cm2のスフェンタニルを含んでなる。スフェンタニルは好ましくは塩基形態を成しており、そして好ましくは完全に溶解されている。
【0061】
パッチを製造するための多数のマトリックスが当業者に知られており、これらのマトリックスは一般には、マトリックス層3を形成するための使用に適している。好ましい実施態様において、マトリックス層3は、医薬的に許容し得る感圧接着剤、例えばポリアクリレート、ポリシロキサン、ポリイソブチレン(PIB)、ポリイソプレン、ポリブタジエン、及びスチレン・ブロックポリマーなどから形成される。スチレン・ブロックコポリマー系接着剤の一例としては、スチレン−イソプレン−スチレン・ブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレン・コポリマー(SBS)、スチレン−エチレンブテン−スチレン・コポリマー(SEBS)、及びこれらのジ−ブロック類似体が挙げられるが、これらに限定されない。アクリルポリマーは、アクリル酸、アルキルアクリレート、メタクリレート、共重合性二次モノマー又は官能基を有するモノマーを含む群から選択された少なくとも2種又は3種以上の例としての成分を含んでなるコポリマー又はターポリマーから成っていてよい。モノマーの一例としては、ビニルアセテート、アクリル酸、メタクリル酸、メトキシエチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルブチルアクリレート、2−エチルブチルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、tert−ブチルアミノエチルアクリレート、tert−ブチルアミノエチルメタクリレート、メトキシエチルアクリレート、及びメトキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0062】
1実施態様の場合、パッチのマトリックス層は、約40重量%、50重量%、60重量%、又は70重量%を上回るポリイソブチレン含量によって特徴付けられる。別の実施態様の場合、マトリックス層は、25重量%、50重量%、60重量%、又は70重量%を上回るポリイソブチレン含量によって特徴付けられ、前記ポリイソブチレンは、高分子量及び低分子量ポリイソブチレン鎖の組み合わせであり、そして、低MWポリイソブチレンと高MWポリイソブチレンとの比は、2:1、3:1又は4:1を上回る。本発明の目的において、高MWポリイソブチレンは、250,000、650,000、又は1,000,000g/molを上回る分子量を有するポリイソブチレンとして定義され、そして低MWポリイソブチレンは、250,000、100,000、又は40,000g/mol未満の分子量を有するポリイソブチレンとして定義される。
【0063】
或る実施態様の場合、付着特性を改善するために、可塑剤又は粘着付与剤が付着性組成物中に内蔵される。好適な粘着付与剤の一例としては、脂肪族炭化水素;芳香族炭化水素;水素化エステル;ポリテルペン;水素化樹脂;粘着付与樹脂、例えばESCOREZ、石油化学原料のカチオン性重合、又は石油化学原料の熱重合及びこれに続く水素化から形成される脂肪族炭化水素樹脂、ロジンエステル粘着付与剤;及び類似のもの;鉱物油及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましい粘着付与剤はポリブテンである。種々の実施態様の場合、マトリックスは、重量比約1:1〜約6:1、又は約2:1〜約5:1、好ましくは約3:1のポリイソブチレンとポリブテンとを含んでなる。
【0064】
マトリックス層はまた、マトリックス内に可溶化されたパッチの活性成分(すなわちスフェンタニル又はその類似体)を含有する。薬物は塩基、塩又はエステルの形態を成していてよいが、好ましくはその塩基の形態で供給される。マトリックス層は好ましくは、マトリックス層の固形分を基準として約1〜約20重量%、約1.5〜約10重量%、又は約2〜約5重量%を占める。特に好ましい実施態様の場合、パッチは約2.5cm2、又はその倍数の面積を有しており、そして好ましくは約2.9%の重量パーセントで、約0.25mgの1cm2当たりのスフェンタニルを含んでなる。好ましい実施態様の場合、パッチは、薬物が少なくとも6か月、1年、18か月又は2年間にわたって再結晶化することなしに、この濃縮状態で可溶化されたままであるように包装される。
【0065】
1実施態様の場合、本発明のパッチは、1種又は2種以上の非溶解成分、例えば刺激低減剤を含んでなる。驚くべきことに、非溶解粒子を含有するパッチが、非溶解粒子なしのパッチよりも良好に耐容されることが判った。1実施態様の場合、非溶解粒子は、ペクチン(すなわち天然型1,4−グリコシド高分子量炭水化物)、アラビナン、ガラクタン、及び類似体から選択される。好ましい実施態様の場合、非溶解成分は非サッカライド多価アルコールリン酸エステル、又はその一価又は二価金属イオン塩、例えばそのカルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、又はマグネシウム塩である。特に好ましい非溶解成分はグリセロリン酸カルシウムである。非溶解粒子は好ましくは、約0.5重量%、1.0重量%、又は3.0重量%を上回り、且つ約10重量%未満の量で、マトリックス中に存在する。
【0066】
本発明のパッチ内には透過促進剤を任意に採用することができる。透過促進剤はよく知られており、また皮膚透過促進剤、促進剤、アジュバント、及び吸着促進剤の用語で当業者に呼ばれている。これら全ての用語をまとめてここでは「透過促進剤」と呼ぶ。このクラスに含まれる作用物質は種々様々な作用メカニズムを有しており、マルチ−モノマー高分子マトリックス中の薬物の溶解性及び拡散性を改善する作用物質、及び角質層の湿分維持能力を変化させ、皮膚を軟化させ、皮膚透過性を改善し、浸透補助剤又は毛包オープナーとして作用し、又は境界層を含む皮膚の状態を変化させることにより、皮膚の透過性を改善する作用物質を含む。
【0067】
粘着付与剤、バインダー及びレオロジー剤(すなわち増粘剤)を含む種々の医薬的に許容し得る添加剤及び賦形剤が、マトリックス内に内蔵されてもよい。他の添加剤及び賦形剤は、希釈剤、安定剤、充填剤、粘土、緩衝剤、殺生物剤、保湿剤、抗刺激剤、抗酸化剤、保存剤、可塑剤、架橋剤、矯味剤、着色剤、及び顔料などを含む。好ましい実施態様の場合、マトリックスは、好ましくはマトリックス内の唯一の非溶解成分を構成するグリセロリン酸カルシウムをも含む。
【0068】
本発明によるマトリックス組成物は、揮発性の極性及び/又は非極性有機液体中に適量のマトリックス材料を先ず混合することにより調製することができる。次いで、適量の活性成分をマトリックス材料に添加し、そして成分を十分に混合する。活性成分は好ましくは、メタノール、エタノール、2−プロパノール、又はエチルアセテート中に溶解された溶液として添加される。次に、マトリックス組成物の混合物を周囲温度で、好ましくは可撓性シート材料、例えば保護層2上に、制御された特定の厚さでコーティング又は流延し、続いて高温で(例えば炉を通過させることによる)揮発性溶媒を蒸発させることにより、膜に形成する。可撓性シート材料上にコーティング又は流延されたマトリックスを次いで、別の可撓性シート材料、カバー層4に積層する。次いで、適当なサイズ及び形状の個々のパッチをカットし、そして包装する(例えば袋に入れる)。
【実施例】
【0069】
本明細書中で主張される化合物がどのように製造され評価されるかに関する完全な開示及び説明を当業者に提供するように、下記実施例を示す。これらの実施例は、単に本発明を例示するように意図されており、本発明者が自身の発明と見なすものの範囲を限定しようとするものではない。数値(例えば量、温度など)に関する精度を確実にしようと努力はしているが、いくらかの誤差及び偏差は考慮しなければならない。特に断りのない限り、部は重量部であり、温度は℃で記載されるか又は室温であり、そして圧力は大気圧又は大気圧に近い圧力である。
【0070】
実施例1-- スフェンタニルの最小及び平均有効血漿中レベルの測定
下記表Aは、集中治療における適用、及び術後又は慢性疼痛適用時の持続的鎮痛のために用いられるスフェンタニル輸液から、中央スフェンタニルi.v.輸液速度、及びその結果としての定常状態血漿中レベルを要約している。集中治療室(ICU)の場合、目標は一般に、患者の穏やかな鎮静(眠気はあるがしかし容易に覚醒する)、及び効果的な鎮痛である。持続的な疼痛コントロールのためには、目標は、最小から中度の鎮静を伴う効果的な疼痛コントロールである。これらの研究では、定常状態スフェンタニル輸液が、一般に、前投薬物としての、そして患者管理鎮痛(PCA)ポンプを通して患者によって要求されるものとしての、付加的なスフェンタニル・ボーラス注射と組み合わされる。
【0071】
表Aの6種の試験から得られた「持続的鎮痛のための平均静脈内輸液速度」(Coda他(1997)の範囲の中点を使用)は、0.104mcg/kg/時間であった。表Aにおける3種の疼痛試験からの平均又は中央血漿中レベルの平均(「平均鎮痛剤血漿中レベル)は、Geller他(1993)からの引用範囲の中点値を使用して、63pg/mlであることが判った。この平均を導出するために使用される3種の鎮痛試験は全て、静脈内スフェンタニルが大手術後の単独鎮痛剤として使用された術後疼痛試験であった。疼痛は、これらの研究においてスフェンタニルによって良好にコントロールされるものとして記載された。
【0072】
【表3】
【0073】
1つの術後試験が、「最小有効鎮痛剤血漿中レベル」を測定しようと試み、その値は30pg/mlと見積もられた(Lehmann他、'91)。この最小有効レベルは、表Aの術後試験から見積もられた平均有効薬物レベルの48%である。定常状態血漿中レベルが、これらの低い投与量レベルにおける輸液速度に対して線形的に相関すると仮定すると、最小有効血漿中レベルは、0.050mcg/kg/時間の「最小有効静脈内輸液速度」に従って達成されるはずである。これらの最小値及び平均値を下記表Bに要約する。
【0074】
【表4】
【0075】
実施例2--スフェンタニル・パッチの組成
表Cは、本発明のパッチのための組成例を示す。
【0076】
【表5】
【0077】
実施例3--スフェンタニル・パッチの形成方法
PIB接着剤(Oppanol B 100、Oppanol B10、及びParapol 920)を形成する所要量の3種の賦形剤を秤量し、そして攪拌下のヘキサン中に溶解する。スフェンタニルをエチルアセテート中に溶解する。攪拌下の透明な薬物溶液にグリセロリン酸カルシウムを添加することにより、均一な懸濁液を産出する。攪拌下の薬物溶液に接着剤溶液をゆっくりと添加し、これをさらに1時間にわたって攪拌することにより、気泡なしの均一混合物を産出する。ベンチスケール製造において、次いでこの混合物を15分で2回にわたって超音波処理する(これにより、存在する場合には気泡を除去する)。
【0078】
混合物を剥離ライナー上にコーティングする(この混合物は、分散されたグリセロリン酸カルシウムの分離を回避するために一定の攪拌下に置かれなければならない)。コーティングされた膜を10分間にわたって室温で乾燥させ、続いて75℃で20分間にわたって乾燥させた。裏当てフォイルを被着し、そして結果として生じた積層体からパッチを打ち抜き、続いて、ヒートシールされた個々の袋内に一次的に包装する。
【0079】
実施例4--スフェンタニル・パッチの生体利用可能性試験
スフェンタニル経皮パッチの安全性、耐容性、及び薬物動態を調査するための単一施設、一回投与、オープンラベル試験を、並列グループのデザインを用いて行った。図3は、7日間にわたる健常ボランティア(n=6)の第1相単回投与生体利用可能性試験における、0.625mgのスフェンタニル塩基を含有する本発明に従って構成された2.5cm2パッチに関する経時的in vivo血漿中レベルを示すグラフである。他の動態変数を下記表Eで報告する。
【0080】
【表6】
【0081】
実施例5--Duragesic(登録商標)の比較生体利用可能性試験
商業的に入手可能なDragesicパッチについて、別個の生体利用可能性試験を行い、そして図3にプロットされた薬物動態に対して結果をグラフで示した。図4は、2つの異なるパッチ:(1)0.625mgのスフェンタニル塩基を含有する本発明に従って構成された2.5cm2パッチ、及び(2)25mcg/時間の公称フラックス速度を有するDuragesicフェンタニル・パッチ、のそれぞれのパッチに関するCmaxを100%として正規化された、経時的in vivo血漿中レベルを示すグラフによる比較である。図5は、図4に示した2つのパッチに関するCmaxの変動係数(CV)を示すグラフによる比較である。
【0082】
実施例6--Durectスフェンタニル・パッチの比較生体利用可能性分析
PCT国際特許出願公開第WO2006/047362号パンフレットに報告されているような、Durect Corporationによって開発された2種の付着性マトリックス型スフェンタニル・パッチの薬物動態について分析を行った。パッチのそれぞれの適用面積は2.0cm2であった。マトリックスのそれぞれは同一の組成及びスフェンタニル濃度を有した。第1のパッチは0.91mgのスフェンタニル塩基を含有する「薄型」パッチであった。第2のパッチは1.7mgのスフェンタニル塩基を含有する「厚型」パッチであった。パッチ適用160時間にわたる血漿中レベルを図6に再現し、そして実施例3のパッチの薬物動態と比較する。図7は、正規化経時的血漿中レベルをプロットし、ここでもやはり実施例3のパッチと比較する。
【0083】
実施例7--溶解度再結晶化試験
各ポリマー中に異なる薬物濃度を有するパッチを製造することによって、ポリマー中の薬物溶解度を測定するための再結晶化試験を行った。製造後、得られた積層体には非溶解薬物はなかった。打ち抜きによって積層体からパッチを得た。単独のパッチを、光及び湿分に対して絶対的に密な複合材料から成る4辺シーリング袋内に保存し、また25℃/60%RHで保存するか、又は40℃/75%RHの人工気象室内にシールしない状態で保存した。1、2及び4週の保存後に、パッチの結晶を視覚的且つ巨視的に分析した。結晶の時間、量、及びサイズを評価した。40℃/75%RHのストレス下で4週間が経過した後に結晶を産出する濃度は、溶解度を上回ると判定され、40℃/75%RHのストレス下で4週間が経過した後に結晶が現れない次に低い濃度は、溶解度を下回ると判定された。溶解度は、これら2つの薬物負荷濃度の間に存在することが見極められた。結果を表Fに報告する。
【0084】
【表7】
【0085】
実施例8--スフェンタニル・パッチの複数回投与生体利用可能性試験
72時間毎に交換されるスフェンタニル経皮パッチの安全性、耐容性、及び薬物動態を調査するための単一施設、三回投与、オープンラベル試験を、並列グループのデザインを用いて行った。図8は、7日間にわたる健常ボランティア(n=7)の第1相複数回投与生体利用可能性試験における、0.625mgのスフェンタニル塩基を含有する本発明に従って構成された2.5cm2パッチに関する経時的in vivo血漿中レベルを示すグラフである。他の動態変数を下記表F及びGに報告する。
【0086】
【表8】
【0087】
【表9】
【0088】
各パッチから送達された平均スフェンタニル量が0.34mgであり、この量は各パッチに対して約54%の損失に換算されることを付け加えるのは重要である。また、2.5cm2のパッチから血漿中濃度が、最小有効血漿中濃度に一旦達すると(30pg/ml)、パッチが3日毎に再投与される限り、30pg/mlの最小有効血漿中濃度を下回ることは決してない。
【0089】
第3パッチ投与中の平均血漿中濃度は、定常状態に達した後、53.8pg/mLであった。Fisher他(2003), Anesthesiology 99(4): 929-37で報告された浸透圧ポンプに基づいて、1mcg/時間のスフェンタニルの定常状態送達が、約15.2pg/mlの平均血漿中濃度をもたらすと想定することができる。この試験で観察された53.8pg/mlの平均血漿中濃度に基づいて、本発明の2.5cm2のパッチは約3.5mcg/時間の定常送達速度を達成すると考えられる。
【0090】
実施例9--目標スフェンタニル・レベルを達成するための経皮送達速度の計算
持続的鎮痛に必要となる最小レベルで始めて、種々の目標スフェンタニル血漿中レベルを達成するために必要とされる理論上のスフェンタニル経皮送達速度を見極めるために、計算を行い、効果的な最小鎮痛レベル(すなわち30pg/ml)を達成するために必要とされる送達速度が0.050mcg/kg/時間であることが見極められた(パッチからの生体利用可能性が100%であることを想定する)。この値は70kgの成人に対して3.5mcg/時間に等しい。最小パッチ・サイズが5cm2である場合、表Hは目標経皮送達速度及びスフェンタニル血漿中レベルを提示することになる。
【0091】
【表10】
【0092】
これらの予想とは逆に、本発明によるパッチの3.5mcg/時間の送達は実際には、53.8pg/mlの定常状態血漿中濃度を達成することができる。
【0093】
この出願全体を通して、種々の刊行物が参照される。これらの刊行物の開示内容全体を、本発明が関連する技術分野の現状をより完全に記述するために、参考として本明細書中に引用する。本発明の範囲又は思想から逸脱することなしに、種々の改変及び変更を本発明に加え得ることは当業者には明らかである。本明細書の考察及び本明細書中に開示された本発明の実施から、本発明の他の実施態様が当業者には明らかになる。本明細書及び例が単に一例と見なされ、本発明の真の範囲及び思想は添付の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、本発明に従って構成された付着性マトリックス・パッチを示す頂面図である。
【図2】図2は、好ましい3層構造を示す、本発明に従って構成された付着性マトリックス・パッチを示す側方斜視図である。
【図3】図3は、7日間にわたる健常ボランティア(n=6)の第1相単回投与生体利用可能性試験における、0.625mgのスフェンタニル塩基を含有する本発明に従って構成された2.5cm2パッチに関する経時的in vivo血漿中レベルを示すグラフである。
【図4】図4は、2つの異なるパッチ:(1)0.625mgのスフェンタニル塩基を含有する本発明に従って構成された2.5cm2パッチ、及び(2)25mcg/時間の公称フラックス速度を有するDuragesic(登録商標)フェンタニル・パッチ、のそれぞれのパッチに関するCmaxを100%として正規化された、経時的in vivo血漿中レベルを示すグラフによる比較である。スフェンタニル・パッチは12時間目にTmaxを示し、フェンタニル・パッチは24時間目にTmax示す。
【図5】図5は、図4に示した2つのパッチに関するCmaxの変動係数(CV)を示すグラフによる比較である。スフェンタニル・パッチは、下側の線で示され、フェンタニル・パッチは上側の線で示されている。
【図6】図6は、3つの異なるパッチ:(1)0.625mgのスフェンタニル塩基を含有する本発明に従って構成された2.5cm2パッチ、(2)0.91mgのスフェンタニル塩基を含有するPCT国際特許出願公開第WO2006/047362号パンフレットに従って構成された2.0cm2パッチ、及び(3)1.7mgのスフェンタニル塩基を含有するPCT国際特許出願公開第WO2006/047362号パンフレットに従って構成された2.0cm2パッチ、に関する経時的in vivo血漿中レベルを示すグラフによる比較である。
【図7】図7は、図6に示されたのと同じ3種のパッチに関する経時的in vivo血漿中レベルを、パッチの適用面積を基準として正規化した状態で示すグラフによる比較である。
【図8】図8は、3日ごとに新しいパッチが適用される健常ボランティア(n=7)の第1相複数回投与生体利用可能性試験における、0.625mgのスフェンタニル塩基を含有する本発明に従って構成された2.5cm2パッチに関する第3投与期間の経時的in vivo血漿中レベルを示すグラフである。
【図9】図9は、3日ごとに新しいパッチが適用される図8に示した第1相複数回投与生体利用可能性試験における、0.625mgのスフェンタニル塩基を含有する本発明に従って構成された2.5cm2パッチに関する経時的in vivo血漿中レベルの変動係数を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
先行出願との関連
本出願は、2006年4月21日付けで出願された独国特許出願第10 2006 019 293.1号明細書、及び2007年2月26日付けで出願された米国仮特許出願第60/903,505号明細書に基づく優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、スフェンタニル及び関連類似体、例えばフェンタニルの経皮送達のための方法及びシステムに関する。本発明はまた、長時間にわたる持続性の疼痛、及び限られた継続時間の急性疼痛発症を治療するために使用することができる、独自の薬物動態プロフィールを有するスフェンタニル・パッチに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
スフェンタニルは、ヒト用の薬剤において有用性が証明されているフェンタニル化合物群における強力な合成オピオイドである。この薬物は、N−[4−(メトキシメチル)−1−[2−(2−チエニル)エチル]−4−ピペリジニル]−N−フェニル−プロパンアミドとして化学的に知られており、また下記化学構造:
【化1】
によって特徴付けられる。この薬物はフェンタニル化合物群において、フェンタニル、ロフェンタニル、アルフェンタニル、カルフェンタニル、及びレミフェンタニルを含む数多くの類似体を有している。クエン酸塩としての注射可能なスフェンタニル製剤が、Sufenta(登録商標)という商標のもとに全身麻酔のために米国内で承認されている。
【0004】
フェンタニル及びスフェンタニルの相対的な効力が文献に報告されているが、しかしその報告は一貫性がない。例えば米国特許第4,588,580号明細書には、スフェンタニルがフェンタニルよりも約15倍強力であることが報告されており、これに対してPCT国際特許出願公開第WO2006/047362号パンフレットには、スフェンタニルがフェンタニルよりも約7.5〜15倍強力であることが開示されている。
【0005】
経皮パッチは、皮膚に適用されると患者の皮膚を通して薬物を所定の速度で送達する、薬物を含有する付着性包帯である。最もシンプルなタイプのパッチは、可撓性裏層上に配置された薬物含有マトリックスを含んでなる付着性モノリスである。マトリックスを皮膚に直接に付着させることができるように、マトリックスは典型的には感圧粘着剤から形成されるが、しかしマトリックスは、非付着性材料から形成することもできる。この場合、付加的な付着層がマトリックスの皮膚接触面上に形成される。薬物がこれらのパッチから送達される速度は、人によって、また皮膚適用部位によって皮膚透過性に違いがあることにより変化しうる。より複雑なパッチは、リザーバ層と皮膚接触接着剤との間に薬物放出速度制御膜が配置された多層タイプ又は液体リザーバ・タイプのパッチである。この膜は、パッチからのin vitro薬物放出速度を低下させることにより、皮膚透過性の変動の影響を低減することができる。
【0006】
経皮パッチを通したオピオイドの送達は、慢性持続性疼痛の治療においてかなり有望である。なぜならば、これらのパッチは、再投与の必要なしに数日間にわたって持続的に鎮痛剤を送達することができるからである。フェンタニル及びその類似体の経皮投与法が数多くの特許明細書中に記載されている。例えば、米国特許第4,466,953号;同第4,470,962号;同第4,588,580号;同第4,626,539号;同第5,006,342号;同第5,186,939号;同第5,310,559号;同第5,474,783号;同第5,656,286号;同第5,762,952号;同第5,948,433号;同第5,985,317号;同第5,958,446号;同第5,993,849号;同第6,024,976号;同第6,063,399号及び同第6,139,866号の各明細書を参照されたい。米国特許第4,588,580号明細書には、スフェンタニルの皮膚中の溶解度が、フェンタニルの約25〜50%であることも開示されている。しかし、オピオイドに対する応答の患者間変動と結びついた、オピオイドに関する狭い治療指数が、これらの投与において極度の用心を命じる。
【0007】
フェンタニルの経皮パッチ送達は米国において、Janssen PharmaceuticaによるDuragesic(登録商標)ブランドのフェンタニル・パッチの規制認可に伴って、1990年に商品化されるようになった。製品は、面積に比例した量のフェンタニルを皮膚を通して全身循環に送達するいくつかのパッチ・サイズにおいて承認され、このような強力な鎮痛剤の一定の血漿中レベルを必要とする患者の間で絶大な人気があることが判っている。Duragesic(登録商標)は、3日間にわたって患者に適用され、そして慢性持続性疼痛の治療のために使用される。Duragesic(登録商標)フェンタニル・パッチは、3日ごとに取り外し、そして新しいパッチに置き換えるように意図されており、また、投与量が経時的に増大すること、そして突出痛に対処するために他の鎮痛剤を併用することが考えられる。パッチは、脂肪組織内に薬物を蓄積させ、そして後になって脂肪組織から循環内への逆薬物放出をもたらす高い親油性;皮膚蓄積作用として知られる現象、を含む数多くの欠点を負っている。臨床において、このことは、投与量を調節する前に最大定常状態血中濃度に達するのを保証するように、投与量を漸増する前にパッチを数回適用しなければならないので重要である。
【0008】
これまで、定期的に交換するように設計された経皮オピオイド・パッチは、パッチの単回適用過程全体にわたって定常的な量の薬物をゆっくりと送達すべきであると考えられており、そして単回投与過程全体にわたるこの低速且つ定常的な送達は、繰り返しされるパッチ適用過程全体にわたって臨床的に有意義な血漿中濃度不変性を保証するために必要であると考えられている。この考えは、Durect CorporationによるPCT国際特許出願公開第WO2006/047362号パンフレットにおいて最も明らかである。このパンフレットは、最初の24時間のパッチ適用過程全体にわたる低速のスフェンタニル取り込み、及び次の連続した6日間にわたるほとんど一定のスフェンタニルの血漿中レベルを示す。Durectの出願によれば、パッチは、単一パッチの適用から最大7日間にわたって実質的にゼロ次の動態を達成した。実施例には、15.4重量%の高MWポリイソブチレン(Oppanol B100)、22重量%の低MWポリイソブチレン(Oppanol B12)、48.5重量%のポリブテン、6.5重量%のCAB−O−Sil、及び7.7重量%のスフェンタニルを含有するパッチが記載されている。PCT国際特許出願公開第WO2006/047362号パンフレットに報告されたDurectパッチから得られる血漿中レベルは、本明細書では図6及び7にプロットされている。
【0009】
従来のスフェンタニル・パッチは、Alza CorporationによるPCT国際特許出願公開第WO02/074286号パンフレットにも記載されており、このパンフレットは、パッチ中のスフェンタニル濃度が増大すると、比例した量のスフェンタニル透過を呈し、そして特に低投与量の場合、最初の36時間又は72時間にわたるパッチ投与過程全体にわたってほとんど定常的なスフェンタニル・フラックス速度を呈する。実施例には、ポリアクリレート・マトリックス中に、任意には透過促進剤とともに、0.25、0.5、0.75、1.0又は1.1mgのスフェンタニル(2、4、6、8、及び9重量%のスフェンタニルに相当)を含有する2.54cm2パッチが記載されている。Alza出願の図4には、種々のスフェンタニル濃度におけるパッチからのin vitro皮膚フラックス速度が報告されている。
【0010】
Alza刊行物によれば、そこに記載されたスフェンタニル・パッチは、約0.1〜約10mcg/(cm2・時間)の標準化フラックス速度、及び約0.04〜約10ng/(ml・(mg/時間))の正規化Cmax(Cmaxを公称in vivoフラックス速度で割り算した値として定義される)を達成することができる。この刊行物には、いかに速くスフェンタニル・パッチがCmaxに達することになるかは開示されておらず、約24時間以内でCmaxに達するフェンタニル・パッチが開示されている。
【0011】
オピオイド・パッチの重大な問題は、パッチの流用、及びパッチが取り除かれ廃棄された後のオピオイド残余物の不正使用である。一定の送達速度に当てられた従来技術の焦点は、パッチ内のフラックス速度と薬物濃度との関係から、この残余物を最小限にしようとする努力を妨げている。薬物フラックスの著しい変化を防止するためには、パッチ投与過程全体を通して、高い薬物濃度が典型的にパッチ内に存在しなければならない。PCT国際特許出願公開第WO2006/047362号パンフレット(飽和を上回るスフェンタニル濃度を報告している)を参照されたい。必要とされるのは、パッチが取り外された後パッチ中に多量のスフェンタニル残留物を残すことなしに、パッチの繰り返しの適用過程全体にわたってスフェンタニル血漿中濃度中に臨床的に有意義な不変性、及び臨床的に有意な疼痛コントロールを提供するパッチを提供することである。
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
従来技術の教示とは異なって、本発明者は、パッチの平均送達速度に対して比較的短い時間枠内で高いCmaxを達成することにより、--単一パッチから少なくとも3日間の期間にわたって--臨床的に有意な持続的鎮痛を達成するためのスフェンタニル及びその類似体を送達するパッチを開発した。具体的には、パッチは、約12時間以内のパッチ適用でCmax(最大血漿中濃度)の少なくとも80%の血漿中濃度に達し、そしてなおも、少なくとも3日間にわたって持続的鎮痛を提供することができる。短い時間枠でパッチ中の活性成分の大部分を迅速に放出することにより、これらのパッチは長期間及び短期間の鎮痛効果を提供する一方、(1)パッチ内に必要とされる活性成分の量を少なくし、そして(2)パッチが除去され廃棄されたときのパッチ中の残余薬を低減する。
【0013】
血流中への活性成分のこのような迅速且つ効率的な放出は、いくつかの動態変数によって特徴付けることができる。1実施態様の場合、これらのパッチは、3日間の投与期間、15又は20ng/(ml・(mg/時間))を上回る、3日間にわたる正規化Cmax(Cmaxを薬物フラックスで割り算した値として定義される)によって特徴付けられる。別の実施態様の場合、パッチは、0.01又は0.03ng/(ml・cm2)を上回る標準化Cmax(Cmaxをパッチの表面積で割り算した値として定義される)によって特徴付けられる。さらに別の実施態様の場合、パッチは、約18時間以下のTmax、又は約12時間以下の80% Tmax(すなわち80% Cmaxに達するために必要とされる時間)によって特徴付けられる。
【0014】
多数の投与量研究が着手され、そして定常状態の薬物動態特性が分析されるまで明らかにはならなかった本発明の別の特徴は、平均定常状態血漿中濃度と定常状態公称フラックスとの関係である。静脈内輸注研究を用いた理論上の計算は、1mcg/時間が10pg/ml未満のスフェンタニル血漿中濃度をもたらす(実施例9参照)ことを予測し、単回投与生物利用可能性試験がこれらの予想と一致するのに対して、本発明者は、定常状態では、パッチが15pg/mlを上回る平均血漿中濃度を達成することを発見した。従って、別の実施態様の場合、パッチは、1.5×10-5時間/mlを上回る、公称フラックスに対する平均血漿中濃度の比によって特徴付けられる。
【0015】
或いは、当該パッチからの活性成分の迅速な送達は、下記薬物動態パラメータ(好ましくは3日間の適用期間にわたって定義される)のうちの1つ又は2つ以上によって特徴付けることもできる。
・パッチ内の活性成分の量、及び処方適用期間全体にわたって患者に最終的に送達される活性成分の量に対して高いCmax;
・パッチ内の活性成分負荷量に対して高い、処方適用期間の定常状態平均血漿中濃度;
・約1.5を上回る、Cminに対するCmax血漿中濃度の比(CminはCmaxに達した後に同定される);及び/又は
・特に商業的なDuragesic(登録商標)製品と比較して低い、血漿中濃度の変動係数。
【0016】
パッチは典型的には、既存の静脈内又は経口オピオイド薬剤の代替物として、オピオイド治療を既に受けている患者に適用される。このように例えば、約60〜約134mg/日の経口モルヒネを受容している患者には、最初は(処方投与期間全体にわたって平均して)約3.5mcg/時間のスフェンタニルを送達するパッチが処方されることになる。パッチ適用期間中に患者が付加的な疼痛コントロールのための補足的なオピオイドを自己投与する場合には、パッチ投与量は、経口モルヒネ45mg/日に対してスフェンタニル送達量の増加1.75mcg/時間の比率を用いて、補足的なオピオイドの一日投与量に基づいて増大させることができる。
【0017】
さらに別の実施態様は、これらの驚くべき薬力学を有するパッチを形成するために使用される特定の製剤に関する。こうして1実施態様において、本発明は、スフェンタニル又はその類似体のうちの1種を含有するパッチの主要マトリックス成分としてポリイソブチレンを使用することに関し、この場合、マトリックスは50重量%を上回るポリイソブチレンを含んでなり、ポリイソブチレンにおいて、低MWポリイソブチレンと高いMWポリイソブチレンとの比は、好ましくは2:1、3:1、又は4:1よりも大きく、そして好ましくは20:1よりも小さい。別の実施態様の場合、本発明は、刺激低減剤、例えばグリセロリン酸カルシウムを製剤中に使用することに関する。
【0018】
本発明のさらなる利点が、下記の説明において一部示され、また一部は説明から明らかになるか、又は発明の実施によって学習することができる。本発明の利点は、添付の特許請求の範囲において具体的に指摘された要素及び組み合わせによって実現され達成される。言うまでもなく、前記全般的な説明、及び下記詳細な説明の両方は例示的且つ説明的にすぎず、特許請求の範囲で主張した本発明を限定するものではない。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明は、本発明の好ましい実施態様の下記詳細な説明及びそこに含まれる実施例を参照することにより、より容易に理解することができる。
【0020】
用語の定義及び使用
本明細書中及び特許請求の範囲に使用される単数形は、文脈が明らかに他の意味を示さない限り複数形の指示対象を含む。こうして、例えば「成分」に言及するときには、これは複数の成分混合物を含み、「活性医薬剤」に言及するときには、これは2種以上の活性医薬剤を含む、といった具合である。
【0021】
特に断りのない限り、最終生成物(すなわち、パッチを形成するために使用される製剤と対立するものとしての、パッチ)に関連して本明細書中に使用される「重量%」という用語は、対象成分が関与する総乾燥重量のパーセンテージを意味する。実際には、パッチは典型的には、調製に使用される溶媒のいくらかを維持するので、この理論値は実験値と異なる場合がある。
【0022】
本明細書中に使用される「薬物」という用語は、スフェンタニル及びその類似体を意味し、スフェンタニル、フェンタニル、ロフェンタニル、アルフェンタニル、カルフェンタニル、及びレミフェンタニルなど、及び医薬的に許容し得るこれらの塩及びエステルを含む。好ましい薬物はスフェンタニルであり、そしてこれは好ましくは塩基分子として使用される。
【0023】
本明細書中に使用される「サブ飽和パッチ」という用語は、薬物の濃度がその溶解限度を下回るパッチを意味する。マトリックス層は典型的には、単一相高分子組成物を含んでなり、薬物及び全ての他の成分はマトリックス中のこれらの飽和濃度以下の濃度、そして好ましくはこれらの飽和濃度未満の濃度で存在する。
【0024】
本明細書中に使用される「単一相高分子組成物」という用語は、薬物がポリマー中に可溶化され、そしてマトリックス中のその飽和濃度以下の濃度、そして好ましくはこれらの飽和濃度未満の濃度で存在し、ポリマーと組み合わされた活性成分は単一相を形成する。
【0025】
「第1スフェンタニル・パッチ・システム」は、分析されるべき第1のスフェンタニル・パッチ・システムを意味するのであって、スフェンタニル治療計画中に個体に投与されるべき最初のスフェンタニル・パッチ・システムを意味するものではない。このように、例えば「第1スフェンタニル・パッチ・システム」は、個体に適用される第1、第2、第3などの逐次的なシステムを意味することができる。この文献が個体に適用されるまさに最初のスフェンタニル・パッチ・システムに言及しようとするときには、これは「初期」パッチ・システム又は「順序において第1の」パッチ・システムと呼ばれる。同様に、「第1」期間は、これまでで最初の期間を意味するとは限らない。むしろ最初の期間に言及するためには、「初期」又は同様の意味を持つ他の文言が使用されることになる。
【0026】
考察
上で論じたように、本発明は、スフェンタニル及びその類似体の経皮送達のため、好ましくは疼痛の治療及び持続的鎮痛の提供のための方法及びパッチを提供する。パッチは好ましくは、2、3又は4日以上、最大7日間の期間にわたって鎮痛を誘発してこれを維持するのに十分な速度及び量で薬物を、これを必要とする患者に送達する。1実施態様の場合、疼痛は急性である。1実施態様の場合、疼痛は慢性である。さらに別の実施態様の場合、疼痛は持続性の中度から重度の慢性疼痛である。
【0027】
パッチは典型的には、保護可撓性カバーと、該保護カバーとは反対側に付着性表面を有する中間活性成分層と、該付着性表面に隣接する取り外し可能なカバーとを含んでなる。皮膚に適用されると、活性成分が皮膚内に、そして皮膚を通って拡散し、ここで活性成分は血流中に吸収されることにより全身性鎮痛効果をもたらす。鎮痛の開始は種々のファクター、例えば皮膚中の薬物の溶解性及び拡散性、皮膚の厚さ、皮膚適用部位内部の薬物濃度、及びマトリックス層内の薬物濃度などに依存する。患者が初期適用8時間以内で十分な効果を経験することが好ましい。しかし、これは初期適用時にのみ重要である。繰り返し順次適用されると、パッチの適用部位における残留薬物が、新しいパッチに由来する薬物が新しい適用部位内に吸収されるのとほぼ同じ速度で身体によって吸収される。従って、患者は鎮痛のいかなる中断も被らないはずである。
【0028】
連続的な鎮痛が望ましい場合、消耗したパッチは取り除かれ、新しいパッチが新しい部位に適用される。例えばパッチ又はパッチ・システムは、持続的な鎮痛を提供するために、投与期間の終わりに順次取り外され、そして新しいパッチ又はパッチ・システムで置き換えられる。新しいパッチから新しい適用部位内への薬物の吸収は通常、パッチの前回適用部位内部の残留薬物が身体によって吸収されるのと実質的に同じ速度で行われるので、血中レベルは実質的に一定のままとなる。加えて、投与量を経時的に増大させること、そして突出痛に対処するために他の鎮痛剤を併用することが考えられる。
【0029】
「パッチ・システム」という用語は、投与期間中に適用される1つ又は複数のパッチを意味するために使用される。「パッチ・システム」は、同時投与されるいくつかのベース・パッチから形成されてもよく、或いはベース・パッチの表面積及び薬物送達速度の倍数に等しい表面積及び薬物送達速度を有する単一のより大きいパッチであってもよい。換言すれば、ベース・パッチの総表面積はベース表面積として定義することができ、また、経皮パッチからの送達速度がパッチの総表面積に対して線形的に相関するので、逐次的に大きくなるパッチ・システムは、n・(ベース表面積)の表面積を有することになる。nは整数2〜約10である。本発明のベース・パッチ・システムは好ましくは、最小有効血漿中濃度を上回るか又はこれに等しい平均定常血漿中濃度を達成するように、或いは、定常状態の血漿中濃度が最低有効レベルを下回らないことを保証するように設計される。
【0030】
ベース・パッチのベース送達速度は典型的には、約2.0〜約7.0mcg/時間、又はその間の任意の速度となる。種々の実施態様の場合、ベース・パッチのベース送達速度は、約2.5〜約6.0mcg/時間、約4.0〜約5.0mcg/時間、又は約3.0〜約3.5mcg/時間となる。或いは、パッチは、約2.0±0.3、2.5±0.3、3.0±0.3、3.5±0.3、4.0±0.3、4.5±0.3、5.0±0.3、又は5.5±0.3mcg/時間のベース送達速度を有するものとして記述することもできる。別の代わりの実施態様の場合、パッチは、約2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、又は5.5mcg/時間、場合により±0.1、0.2又は0.3mcg/時間のベース送達速度を有するものとして記述される。逐次的に大きくなるパッチ・システムは、n・(ベース送達速度)に等しい送達速度を有することになり、nは2〜約10の整数である。
【0031】
パッチ構造
本発明のパッチの構造は種々様々であることが可能であるが、好ましいパッチ構造が図1及び2に示されている。図1及び2に示すように、パッチ構造は、皮膚に適用されるパッチ1と、適用前にパッチから取り外される取り外し可能な保護層/剥離ライナー2とを含んでなる。パッチ1は好ましくは、付着層又はマトリックス3及び非反応性カバー層4を含んでなる。活性成分は付着層又はマトリックス内部に組み込まれており、そして剥離ライナー2を取り外すことにより、付着層3を露出させ、この付着層は次いで皮膚に適用することができる。パッチ1及び取り外し保護層2を含むパッチ構造は好ましくは、耐光性且つ耐湿性であるフォイル・パッケージ内に包装される。パッチが成すことができる他の構造は、付加的な層、例えば米国特許第6,190,690号明細書においてParkによって教示されたような、薬物マトリックスと剥離ライナーとの間の付着層、又は薬物マトリックスとカバー層との間のプライマーを有する構造を含む。
【0032】
活性成分のためのベース・パッチ(すなわち皮膚に適用される構造)は任意の形状を成すことができるが、しかし好ましくは、表面積約1.0cm2〜約25cm2、最も好ましくは約1.5cm2〜約5又は10cm2の方形の形状である。マトリックス層の厚さは好ましくは、約0.10〜約2.0mg、約0.15〜約0.50mg、又は約0.20〜約0.40mgがパッチのそれぞれ1平方センチメートル内に存在する(最も好ましくは約0.25mg/cm2)ように設定される。マトリックス層の厚さは約5〜約40milであってよく、また好ましくは、製造中の湿式被着時に、約10〜約25milである。
【0033】
非反応性カバー層4は、パッチの着用可能性において重要な役割を演じる。経皮システムは人体の可動部位に適用されるので、高度の可撓性が必要である。また、カバー層4が、皮膚を閉塞させないように良好な水蒸気透過性を有することも好ましい。カバー層4に適した材料は、ポリエチレンから成るプラスチック・フィルム、ビニルアセテート樹脂、エチレン/ビニルアセテート・コポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリプロピレン、金属フォイル、織布、不織布、布地、及び商業的に入手可能な積層体を含む。裏当て材料の重量は一般に、約2.0〜約2.5mg/cm2である。二方向弾性材料、例えばポリプロピレン不織布が特に有用である。
【0034】
保護層2は好ましくは、マトリックス層に対して不活性であり、そしてマトリックス層から容易に分離することができる材料から成るシート状材料である。保護層材料の例は、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及び紙など、及びこれらの組み合わせを含む。
【0035】
薬物動態
本発明のパッチを特徴付ける最も有用な方法の1つは、これらの薬物動態によるものである。特に断りのない限り、ここで言及される薬物動態パラメータは、初期パッチ・システム又は定常状態で適用されるパッチ・システムの薬物動態を記述するために使用することができる。さらに、(±n)として表現される変動性は任意である。
【0036】
図面から明らかなように、本発明のパッチのスフェンタニル負荷がより低いとしても、本発明パッチは極めて迅速にCmaxに達し、競合パッチよりも著しく高いCmaxに達し、そして競合パッチよりも高い平均血漿中濃度を有する。他のパッチ・システムのベースを形成することもできる0.625mgのスフェンタニルを含有するベース2.5cm2パッチは、例において記載したように、最初の72時間の間、大部分が最小有効レベル(スフェンタニルの場合30pg/ml)と、平均有効レベル(スフェンタニルの場合60pg/ml)との間(これらのレベルから10、20又は40%超外れることはない)に制限されたオピオイド濃度をもたらす。
【0037】
「Cmax」という用語は、本発明の方法に従って投与されたときの薬物のピーク血中又は血漿中濃度を意味する。Cmax(80%)という用語は、Cmaxに達する前に、その薬物のCmaxの80%に達する薬物の血中又は血漿中濃度を意味する。1実施態様の場合、本発明のベース・スフェンタニル・パッチは、約45、50、55、60、65、70、又は75pg/ml(±20%)の、最初の72時間の初期投与中のCmaxを有するものとして記述することができる。定常状態では、本発明のベース・スフェンタニル・パッチは、約55、60、65、70、75、80、85又は90pg/ml(±20%)のCmaxを有するものとして記述することができる。より大きいパッチ・システムが典型的には、ベース・スフェンタニル・パッチによって達成されるCmaxの倍数、すなわちn・(Cmax−base)に達するように設計される。nは整数2〜10である。別の実施態様の場合、ベース・スフェンタニル・パッチは、数学的に可能な終点の任意の組み合わせにおいて、最初の72時間の初期投与中に、約45、50、55又は60pg/ml超であり且つ約85、80、75又は70pg/ml未満であるCmaxを有するものとして記述される。定常状態では、ベース・スフェンタニル・パッチは、数学的に可能な終点の任意の組み合わせにおいて、約55、60又は65pg/ml超であり且つ約90、85又は80pg/ml未満であるCmaxを有するものとして記述することができる。
【0038】
本明細書中に使用される「標準化Cmax(pg/ml-cm2)」という用語は、システムの活性薬物送達領域、例えばマトリックス層の領域の、単位面積(cm2)当たりのCmax(pg/ml)を意味する。1実施態様の場合、スフェンタニル・パッチは、初期投与中又は定常状態時に、20.0、25.0、27.5、30.0、32.5、35.0又は40.0pg/ml-cm2(±20%)の標準化Cmaxを有するものとして記述される。別の実施態様の場合、スフェンタニル・パッチは、数学的に可能な終点の任意の組み合わせにおいて、初期投与中又は定常状態時に、約20.0、25.0、27.5、30.0、32.5又は35.0pg/ml-cm2を上回り、且つ約42.5,40.0、37.5、又は35.0pg/ml-cm2未満である標準化Cmaxを有するものとして記述される。
【0039】
本明細書中に使用される「正規化Cmax(pg/ml-(mcg/時間))」という用語は、Cmax(pg/ml)を、定義された期間全体にわたる平均薬物フラックス(mcg/時間)で割り算したものを意味する。1実施態様の場合、スフェンタニル・パッチは、パッチが最初に又は定常状態で適用されたときに、10.0、11.0、12.5、14.0、15.5、17.0、18.5、20.0、21.5、23.0、24.5又は26.0pg/ml-(mcg/時間)(±5、10又は20%)の正規化Cmaxを有するものとして記述される。別の実施態様の場合、スフェンタニル・パッチは、数学的に可能な終点の任意の組み合わせにおいて、パッチが最初に又は定常状態で適用されたときに、約10.0、11.0、12.5、14.0、15.5、17.0、又は18.5、20.0、又は21.5pg/ml-(mcg/時間)を上回り、且つ約20、25、30又は35pg/ml-(mcg/時間)未満である正規化Cmaxを有するものとして記述される。
【0040】
別の主な実施態様の場合、本発明は、パッチからの薬物の定常状態フラックスに対する、定常状態におけるパッチに関して観察される平均血漿中濃度に基づいて特徴付けられる。輸液速度ならば1mcg/時間のフラックスが10pg/ml未満の定常状態血漿中濃度をもたらすことを示唆するであろうが、本発明者は、本発明のパッチによる約3.5mcg/時間の定常状態送達量が、約53.8pg/mlの定常状態血漿中濃度をもたらすことを発見した。すなわち、本発明のパッチは、1.0×10−5hr/ml、1.2×10−5時間/ml、1.4×10−5時間/ml、又は1.5×10−5時間/mlを上回る、公称(すなわち定常状態)フラックスに対する平均血漿中濃度の比をもたらす。
【0041】
さらに別の実施態様の場合、パッチは、最大血漿中濃度に達するのにかかる時間、又は最大血漿中濃度の80%に達するのにかかる時間によって特徴付けられる。種々の実施態様の場合、パッチ又はパッチ・システムは、約24、21、18又は15時間又はそれ未満でTmaxに達するか、又は約22、18、15又は12時間又はそれ未満で80%Tmax(すなわち80%Cmaxに達するのに必要とされる時間)に達するものとして記述される。
【0042】
本発明のパッチの特に重要な特徴は、血漿中濃度の素早い発現、そしてパッチが取り外されたときの血漿中濃度の素早い減少である。皮膚から取り外されたときに血漿半減期約17時間を呈する商業的Duragesicパッチとは対照的に、本発明のパッチは、平均血漿半減期12又は10時間未満、又は8〜11、又は9〜10時間を呈する。フロントエンドでは、50%Tmaxは好ましくは10時間又は8時間未満で達成される。
【0043】
別の実施態様の場合、パッチは、パッチ中の活性成分の量に対して高いCmaxによって特徴付けられる。従って、1実施態様の場合、パッチは、約50〜約200pg/ml・mg、約70〜約150pg/ml・mg、又は約100〜約135pg/ml・mgの負荷Cmax(すなわちパッチ中のスフェンタニル量に対するCmaxの比)によって特徴付けられる。別の実施態様の場合、本発明は、80、90、100、110、120、130又は140pg/ml・mg(±20%)の負荷Cmaxによって特徴付けられる。
【0044】
別の実施態様の場合、パッチは、処方適用期間全体にわたって患者に最終的に送達される活性成分の量に対して高いCmaxによって特徴付けられる(「放出負荷Cmax」−パッチ重量の低減により測定した、パッチから放出されたスフェンタニル量に対するCmaxの比として定義される)。従って1実施態様の場合、パッチは、約100〜約400pg/ml・mg、約140〜約300pg/ml・mg、又は約200〜約270pg/ml・mgの放出負荷Cmax(pg/ml・mg)によって特徴付けられる。別の実施態様の場合、本発明は、160、180、200、220、240、260又は280pg/ml・mg(±20%)の放出負荷Cmaxによって特徴付けられる。
【0045】
別の実施態様の場合、パッチは、パッチ内の活性成分負荷量に対して高い、処方適用期間の平均血漿中濃度によって特徴付けられる。種々の実施態様の場合、パッチは、4×10−8、5×10−8、6×10−8、7×10−8、4×10−8ml−1よりも高い、平均血漿中濃度をパッチ内のスフェンタニル負荷で割り算した値を達成する。
【0046】
さらに別の実施態様の場合、パッチは、処方投与期間全体にわたる最小血漿中濃度に対する最大血漿中濃度の比によって特徴付けることができる。CminはCmaxに達した後に同定される。種々の実施態様の場合、パッチは、単一パッチ・システムのための48時間、72時間、また96時間の投与期間にわたって、約1.5、1.6、1.7、1.8、1.9又は2.0より高く、且つ約3.0又は2.5未満であるCmax:Cmin比によって特徴付けられる。
【0047】
別の実施態様の場合、パッチは、特に商業的なDuragesic(登録商標)製品と比較して低い、最大血漿中濃度の変動係数によって特徴付けられる。種々の実施態様の場合、Cmaxの変動係数は、40%、30%、又は25%未満である。
【0048】
本発明の好ましい実施態様は、約2、3又は4日間にわたって適用されたときの、本発明の実施例において記載されたパッチに対して生物学的に等価のパッチである。したがって、例えば、1実施態様において、本発明は、基準パッチに対して生物学的に等価のパッチであって、該基準バッチが:a)1.0重量部の高分子量ポリブテン、5.0重量部の低分子量ポリイソブチレン、及び2.0重量部のポリブテンをヘキサン中に溶解することにより、付着性混合物を形成し;b)エチルアセテート中に0.25重量部のスフェンタニル塩基を溶解することにより、薬物混合物を形成し;c)上記薬物混合物中に0.25重量部のグリセロリン酸カルシウムを混合することにより、CGP混合物を形成し;d)上記付着性混合物と上記CGP混合物とを混合することにより混合液を形成し、そして該混合液を1時間にわたって攪拌し;e)該混合液を、約0.25mg/cm2のスフェンタニル濃度で剥離ライナー上にコーティングし;f)該コーティングされたライナーを乾燥させ;そしてg)該乾燥済みのコーティングされたライナーに裏当てフォイルを被着する、ことを含んでなる方法によって形成されたマトリックス・パッチである、パッチを提供する。
【0049】
一般に、標準的な生物学的等価性研究が、少数のボランティア、通常は24〜36名の健常な正常成人でクロスオーバー様式で行われる。試験生成物及び基準生成物の単回投与量が投与され、薬物の血中又は血漿中レベルが経時的に測定される。これらの濃度−時間曲線の特徴、例えば血中又は血漿中薬物濃度−時間曲線下面積(AUC)、薬物のピーク血中又は血漿中濃度(Cmax)、及び/又はピーク血漿中濃度までの時間(Tmax)が、この後でより詳細に説明するように統計的処置によって調べられる。一般に、生物学的等価性研究からの対数変換パラメータ(AUC及びCmax)を使用して、2つの片側統計検定が行われる。2つの片側試験は0.05有意性水準で行われ、90%信頼区間が計算される。試験製剤/組成物及び基準製剤/組成物は、薬物動態パラメータの平均(試験/基準生成物)値の比周辺の信頼区間が下端では80%以上であり、且つ上端では125%以下である場合には、生物学的等価と考える。
【0050】
薬物投与速度がパッチのサイズに対して比例する2種の異なる生成物を比較するときには、薬物のピーク血中又は血漿中濃度(Cmax)は、生物学的等価性を立証するために、システムの活性薬物送達領域の単位面積当たりで標準化される。異なる単位面積当たりの薬物投与速度を有する2種の異なる生成物を比較するときには、生物学的等価性を立証するために投与された薬物の速度を基準として、薬物のピーク血中又は血漿中濃度(Cmax)を正規化することが必要である。BE処置に関する更なる詳細は、“Statistical Procedures for Bioequivalence Studies Using a Standard Two-Treatment Crossover Design”と題されるFDAの1992年7月付けのGuidance Documentに見いだすことができる。この内容を参考のために本明細書中に引用する。
【0051】
投与量
特に好ましい実施態様において、本発明の治療方法は、オピオイド耐性である患者において開始され、そしてパッチは、患者に1日に投与されるオピオイド投与量(すなわちオピオイド需要量)に基づいて投与される。従って例えば、患者が現在約90mg/日の経口モルヒネを服用しているならば、スフェンタニル投与量約3.5mcg/時間で患者に投与開始することが望ましい。この点から、スフェンタニルの置換は本質的に線形の関係となる。従って、1実施態様の場合、本発明の方法は、n・90mg/日の経口モルヒネに対して等効力の既存オピオイド需要を有する患者において開始され(すなわちこの患者は、約90mg/日の経口モルヒネ、又はこの倍数に対して等効力のタイプ及び量のオピオイドを受容している)、そして上記第1パッチ・システムはn・(6.0±0.5)、n・(6.5±0.5)、n・(5.0±0.5)、n・(4.5±0.5)、n・(4.0±0.5)、n・(3.5±0.5)、n・(3.0±0.5)、又はn・(2.5±0.5)mcg/時間のスフェンタニルを送達し、nは整数1〜12である。或いは、n・90mg/日の経口モルヒネに対して等効力の既存オピオイド需要を有する患者に、最初は、n・(1.0〜8.5)、n・(2.5〜4.0)、又はn・(4.0〜5.5)mcg/時間のスフェンタニルを送達するパッチ・システムが処方されてよく、nは整数1〜12である。
【0052】
もちろん、正確に90mg/日の経口モルヒネ又はその倍数が患者に常に処方されるわけでなく、この場合、Duragesic(登録商標)のための処方情報から導き出した下記表を用いて、換算が行われてよい。
【0053】
【表1】
【0054】
言うまでもなく、多くの患者が、パッチ・システムに切り換えたときに、経口モルヒネ以外のオピオイドによる現行の治療を受けることになり、パッチ・システムの投与量は、同じ鎮痛度を与えるのに必要な相対オピオイド投与量を示す等効力チャートから導き出すことができる。Duragesic(登録商標)のための処方情報に見いだされる、認定された等効力チャートを下に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
このように、例えば経口オキシコドンは、経口モルヒネの2倍の効力があり、そして45mg/日の経口オキシコドンを受容する患者には、約3.5mcg/時間を送達するパッチ・システムが最初に好ましくは送達されることになる。この量は、90mg/日の経口モルヒネを受容する患者が好ましく受容するのと同じ投与量である。
【0057】
前記治療方法のいずれにおいても、言うまでもなく、第1パッチ・システムは極めて多くの場合、長期間にわたって持続的鎮痛剤を送達するための一連の治療における最初のものとなるに過ぎない。従って、第2パッチ・システムが第1期間の終了後に適用され、第1パッチ・システムが取り外されると、本発明はさらに、前記第1期間後に、少なくとも2又は3日の第2期間にわたって、前記患者の皮膚に第2パッチ・システムを付着させることを提供し、前記第2パッチ・システムは第2Cmaxを実証し、そして前記第1及び第2のパッチ・システムは同一の組成及びサイズによって定義される。第1Cmaxと第2Cmaxとは好ましくは同じであるか又は類似しており、また種々の実施態様において、第1Cmax値と第2Cmax値とは、20%、15%、10%又は5%以下だけ変化する。或いは、第1Cmax値と第2Cmax値とは、5%、10%、15%又は20%以上だけ変化してよい。
【0058】
1実施態様の場合、活性成分の投与量は、患者が第1適用期間中に不十分な疼痛コントロールを経験する場合、第1パッチ投与後に、増量する方向に調節される。このような実施態様の場合、第2パッチ・システムは前記第1パッチ・システムよりも高いin vivoフラックス速度を有することになる。付加的なスフェンタニル投与量はしばしば、第1適用期間中に患者によって摂取された45mg/日経口モルヒネ毎に1.75mcg/時間スフェンタニル(±0.25mcg/時間)の比を用いて、又は等効力のオピオイド投与量を用いて、第1期間中に患者によって摂取された補足的オピオイド量に基づいて計算することができる。従って、別の実施態様の場合、本発明の方法は、第1期間中に不十分な疼痛コントロールを経験する患者によって特徴付けられ、さらに:(a)前記第1期間中にn・45mg/日経口モルヒネに対して等効力の補足的オピオイド投与量を投与し、そして(b)前記第1システムのin vivoフラックス速度に等しいin vivoフラックス速度、及びn・(1.75±0.25)mcg/時間(nは整数1〜5である)のスフェンタニルを有する第2パッチ・システムを投与する、ことを含んでなる。
【0059】
別の実施態様の場合、活性成分の投与量は、患者が第1及び第2適用期間中に不十分な疼痛コントロールを経験する場合、初期及び第2又は後続のパッチ投与後までは、増量する方向に調節されることはない。このような実施態様の場合、第2パッチ・システムは前記初期パッチ・システムと同じサイズ及び組成を有することになる。初期投与量が第2投与後に不十分であり続ける場合には、付加的なスフェンタニルを有する第3パッチ・システムが適用されてよい。付加的なスフェンタニル投与量はしばしば、第2適用期間中に患者によって摂取された45mg/日経口モルヒネ毎に1.75mcg/時間スフェンタニル(±0.25mcg/時間)の比を用いて、又は等効力のオピオイド投与量を用いて、第2期間中に患者によって摂取された補足的オピオイド量に基づいて計算することができる。従って、別の実施態様の場合、本発明の方法は、初期期間中に不十分な疼痛コントロールを経験する患者によって特徴付けられ、さらに:(a)前記第2期間中にm・45mg/日経口モルヒネに対して等効力の補足的オピオイド投与量を投与し、そして(b)前記第1システムのin vivoフラックス速度に等しいin vivoフラックス速度、及びm・(1.75±0.25)mcg/時間(mは整数1〜5である)のスフェンタニルを有する第3パッチ・システムを投与する、ことを含んでなる。
【0060】
パッチ組成
上記のように、マトリックスは好ましくは、少なくとも3日間にわたってヒトにおいて鎮痛を誘発してこれを維持するのに十分な量の活性成分を含有する単一相高分子組成物を含んでなる。好ましい実施態様の場合、マトリックス層は約0.05〜約1.75mg/cm2のスフェンタニル;好ましくは約0.07〜約1.50mg/cm2のスフェンタニル;好ましくは約0.08〜約1.25mg/cm2のスフェンタニル;より好ましくは約0.09〜約1.0mg/cm2のスフェンタニル;より好ましくは約0.1〜約0.75mg/cm2のスフェンタニル;より好ましくは約0.12〜約0.5mg/cm2のスフェンタニル;及びさらにより好ましくは約0.2〜約0.4mg/cm2のスフェンタニルを含んでなる。スフェンタニルは好ましくは塩基形態を成しており、そして好ましくは完全に溶解されている。
【0061】
パッチを製造するための多数のマトリックスが当業者に知られており、これらのマトリックスは一般には、マトリックス層3を形成するための使用に適している。好ましい実施態様において、マトリックス層3は、医薬的に許容し得る感圧接着剤、例えばポリアクリレート、ポリシロキサン、ポリイソブチレン(PIB)、ポリイソプレン、ポリブタジエン、及びスチレン・ブロックポリマーなどから形成される。スチレン・ブロックコポリマー系接着剤の一例としては、スチレン−イソプレン−スチレン・ブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレン・コポリマー(SBS)、スチレン−エチレンブテン−スチレン・コポリマー(SEBS)、及びこれらのジ−ブロック類似体が挙げられるが、これらに限定されない。アクリルポリマーは、アクリル酸、アルキルアクリレート、メタクリレート、共重合性二次モノマー又は官能基を有するモノマーを含む群から選択された少なくとも2種又は3種以上の例としての成分を含んでなるコポリマー又はターポリマーから成っていてよい。モノマーの一例としては、ビニルアセテート、アクリル酸、メタクリル酸、メトキシエチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルブチルアクリレート、2−エチルブチルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、tert−ブチルアミノエチルアクリレート、tert−ブチルアミノエチルメタクリレート、メトキシエチルアクリレート、及びメトキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0062】
1実施態様の場合、パッチのマトリックス層は、約40重量%、50重量%、60重量%、又は70重量%を上回るポリイソブチレン含量によって特徴付けられる。別の実施態様の場合、マトリックス層は、25重量%、50重量%、60重量%、又は70重量%を上回るポリイソブチレン含量によって特徴付けられ、前記ポリイソブチレンは、高分子量及び低分子量ポリイソブチレン鎖の組み合わせであり、そして、低MWポリイソブチレンと高MWポリイソブチレンとの比は、2:1、3:1又は4:1を上回る。本発明の目的において、高MWポリイソブチレンは、250,000、650,000、又は1,000,000g/molを上回る分子量を有するポリイソブチレンとして定義され、そして低MWポリイソブチレンは、250,000、100,000、又は40,000g/mol未満の分子量を有するポリイソブチレンとして定義される。
【0063】
或る実施態様の場合、付着特性を改善するために、可塑剤又は粘着付与剤が付着性組成物中に内蔵される。好適な粘着付与剤の一例としては、脂肪族炭化水素;芳香族炭化水素;水素化エステル;ポリテルペン;水素化樹脂;粘着付与樹脂、例えばESCOREZ、石油化学原料のカチオン性重合、又は石油化学原料の熱重合及びこれに続く水素化から形成される脂肪族炭化水素樹脂、ロジンエステル粘着付与剤;及び類似のもの;鉱物油及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましい粘着付与剤はポリブテンである。種々の実施態様の場合、マトリックスは、重量比約1:1〜約6:1、又は約2:1〜約5:1、好ましくは約3:1のポリイソブチレンとポリブテンとを含んでなる。
【0064】
マトリックス層はまた、マトリックス内に可溶化されたパッチの活性成分(すなわちスフェンタニル又はその類似体)を含有する。薬物は塩基、塩又はエステルの形態を成していてよいが、好ましくはその塩基の形態で供給される。マトリックス層は好ましくは、マトリックス層の固形分を基準として約1〜約20重量%、約1.5〜約10重量%、又は約2〜約5重量%を占める。特に好ましい実施態様の場合、パッチは約2.5cm2、又はその倍数の面積を有しており、そして好ましくは約2.9%の重量パーセントで、約0.25mgの1cm2当たりのスフェンタニルを含んでなる。好ましい実施態様の場合、パッチは、薬物が少なくとも6か月、1年、18か月又は2年間にわたって再結晶化することなしに、この濃縮状態で可溶化されたままであるように包装される。
【0065】
1実施態様の場合、本発明のパッチは、1種又は2種以上の非溶解成分、例えば刺激低減剤を含んでなる。驚くべきことに、非溶解粒子を含有するパッチが、非溶解粒子なしのパッチよりも良好に耐容されることが判った。1実施態様の場合、非溶解粒子は、ペクチン(すなわち天然型1,4−グリコシド高分子量炭水化物)、アラビナン、ガラクタン、及び類似体から選択される。好ましい実施態様の場合、非溶解成分は非サッカライド多価アルコールリン酸エステル、又はその一価又は二価金属イオン塩、例えばそのカルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、又はマグネシウム塩である。特に好ましい非溶解成分はグリセロリン酸カルシウムである。非溶解粒子は好ましくは、約0.5重量%、1.0重量%、又は3.0重量%を上回り、且つ約10重量%未満の量で、マトリックス中に存在する。
【0066】
本発明のパッチ内には透過促進剤を任意に採用することができる。透過促進剤はよく知られており、また皮膚透過促進剤、促進剤、アジュバント、及び吸着促進剤の用語で当業者に呼ばれている。これら全ての用語をまとめてここでは「透過促進剤」と呼ぶ。このクラスに含まれる作用物質は種々様々な作用メカニズムを有しており、マルチ−モノマー高分子マトリックス中の薬物の溶解性及び拡散性を改善する作用物質、及び角質層の湿分維持能力を変化させ、皮膚を軟化させ、皮膚透過性を改善し、浸透補助剤又は毛包オープナーとして作用し、又は境界層を含む皮膚の状態を変化させることにより、皮膚の透過性を改善する作用物質を含む。
【0067】
粘着付与剤、バインダー及びレオロジー剤(すなわち増粘剤)を含む種々の医薬的に許容し得る添加剤及び賦形剤が、マトリックス内に内蔵されてもよい。他の添加剤及び賦形剤は、希釈剤、安定剤、充填剤、粘土、緩衝剤、殺生物剤、保湿剤、抗刺激剤、抗酸化剤、保存剤、可塑剤、架橋剤、矯味剤、着色剤、及び顔料などを含む。好ましい実施態様の場合、マトリックスは、好ましくはマトリックス内の唯一の非溶解成分を構成するグリセロリン酸カルシウムをも含む。
【0068】
本発明によるマトリックス組成物は、揮発性の極性及び/又は非極性有機液体中に適量のマトリックス材料を先ず混合することにより調製することができる。次いで、適量の活性成分をマトリックス材料に添加し、そして成分を十分に混合する。活性成分は好ましくは、メタノール、エタノール、2−プロパノール、又はエチルアセテート中に溶解された溶液として添加される。次に、マトリックス組成物の混合物を周囲温度で、好ましくは可撓性シート材料、例えば保護層2上に、制御された特定の厚さでコーティング又は流延し、続いて高温で(例えば炉を通過させることによる)揮発性溶媒を蒸発させることにより、膜に形成する。可撓性シート材料上にコーティング又は流延されたマトリックスを次いで、別の可撓性シート材料、カバー層4に積層する。次いで、適当なサイズ及び形状の個々のパッチをカットし、そして包装する(例えば袋に入れる)。
【実施例】
【0069】
本明細書中で主張される化合物がどのように製造され評価されるかに関する完全な開示及び説明を当業者に提供するように、下記実施例を示す。これらの実施例は、単に本発明を例示するように意図されており、本発明者が自身の発明と見なすものの範囲を限定しようとするものではない。数値(例えば量、温度など)に関する精度を確実にしようと努力はしているが、いくらかの誤差及び偏差は考慮しなければならない。特に断りのない限り、部は重量部であり、温度は℃で記載されるか又は室温であり、そして圧力は大気圧又は大気圧に近い圧力である。
【0070】
実施例1-- スフェンタニルの最小及び平均有効血漿中レベルの測定
下記表Aは、集中治療における適用、及び術後又は慢性疼痛適用時の持続的鎮痛のために用いられるスフェンタニル輸液から、中央スフェンタニルi.v.輸液速度、及びその結果としての定常状態血漿中レベルを要約している。集中治療室(ICU)の場合、目標は一般に、患者の穏やかな鎮静(眠気はあるがしかし容易に覚醒する)、及び効果的な鎮痛である。持続的な疼痛コントロールのためには、目標は、最小から中度の鎮静を伴う効果的な疼痛コントロールである。これらの研究では、定常状態スフェンタニル輸液が、一般に、前投薬物としての、そして患者管理鎮痛(PCA)ポンプを通して患者によって要求されるものとしての、付加的なスフェンタニル・ボーラス注射と組み合わされる。
【0071】
表Aの6種の試験から得られた「持続的鎮痛のための平均静脈内輸液速度」(Coda他(1997)の範囲の中点を使用)は、0.104mcg/kg/時間であった。表Aにおける3種の疼痛試験からの平均又は中央血漿中レベルの平均(「平均鎮痛剤血漿中レベル)は、Geller他(1993)からの引用範囲の中点値を使用して、63pg/mlであることが判った。この平均を導出するために使用される3種の鎮痛試験は全て、静脈内スフェンタニルが大手術後の単独鎮痛剤として使用された術後疼痛試験であった。疼痛は、これらの研究においてスフェンタニルによって良好にコントロールされるものとして記載された。
【0072】
【表3】
【0073】
1つの術後試験が、「最小有効鎮痛剤血漿中レベル」を測定しようと試み、その値は30pg/mlと見積もられた(Lehmann他、'91)。この最小有効レベルは、表Aの術後試験から見積もられた平均有効薬物レベルの48%である。定常状態血漿中レベルが、これらの低い投与量レベルにおける輸液速度に対して線形的に相関すると仮定すると、最小有効血漿中レベルは、0.050mcg/kg/時間の「最小有効静脈内輸液速度」に従って達成されるはずである。これらの最小値及び平均値を下記表Bに要約する。
【0074】
【表4】
【0075】
実施例2--スフェンタニル・パッチの組成
表Cは、本発明のパッチのための組成例を示す。
【0076】
【表5】
【0077】
実施例3--スフェンタニル・パッチの形成方法
PIB接着剤(Oppanol B 100、Oppanol B10、及びParapol 920)を形成する所要量の3種の賦形剤を秤量し、そして攪拌下のヘキサン中に溶解する。スフェンタニルをエチルアセテート中に溶解する。攪拌下の透明な薬物溶液にグリセロリン酸カルシウムを添加することにより、均一な懸濁液を産出する。攪拌下の薬物溶液に接着剤溶液をゆっくりと添加し、これをさらに1時間にわたって攪拌することにより、気泡なしの均一混合物を産出する。ベンチスケール製造において、次いでこの混合物を15分で2回にわたって超音波処理する(これにより、存在する場合には気泡を除去する)。
【0078】
混合物を剥離ライナー上にコーティングする(この混合物は、分散されたグリセロリン酸カルシウムの分離を回避するために一定の攪拌下に置かれなければならない)。コーティングされた膜を10分間にわたって室温で乾燥させ、続いて75℃で20分間にわたって乾燥させた。裏当てフォイルを被着し、そして結果として生じた積層体からパッチを打ち抜き、続いて、ヒートシールされた個々の袋内に一次的に包装する。
【0079】
実施例4--スフェンタニル・パッチの生体利用可能性試験
スフェンタニル経皮パッチの安全性、耐容性、及び薬物動態を調査するための単一施設、一回投与、オープンラベル試験を、並列グループのデザインを用いて行った。図3は、7日間にわたる健常ボランティア(n=6)の第1相単回投与生体利用可能性試験における、0.625mgのスフェンタニル塩基を含有する本発明に従って構成された2.5cm2パッチに関する経時的in vivo血漿中レベルを示すグラフである。他の動態変数を下記表Eで報告する。
【0080】
【表6】
【0081】
実施例5--Duragesic(登録商標)の比較生体利用可能性試験
商業的に入手可能なDragesicパッチについて、別個の生体利用可能性試験を行い、そして図3にプロットされた薬物動態に対して結果をグラフで示した。図4は、2つの異なるパッチ:(1)0.625mgのスフェンタニル塩基を含有する本発明に従って構成された2.5cm2パッチ、及び(2)25mcg/時間の公称フラックス速度を有するDuragesicフェンタニル・パッチ、のそれぞれのパッチに関するCmaxを100%として正規化された、経時的in vivo血漿中レベルを示すグラフによる比較である。図5は、図4に示した2つのパッチに関するCmaxの変動係数(CV)を示すグラフによる比較である。
【0082】
実施例6--Durectスフェンタニル・パッチの比較生体利用可能性分析
PCT国際特許出願公開第WO2006/047362号パンフレットに報告されているような、Durect Corporationによって開発された2種の付着性マトリックス型スフェンタニル・パッチの薬物動態について分析を行った。パッチのそれぞれの適用面積は2.0cm2であった。マトリックスのそれぞれは同一の組成及びスフェンタニル濃度を有した。第1のパッチは0.91mgのスフェンタニル塩基を含有する「薄型」パッチであった。第2のパッチは1.7mgのスフェンタニル塩基を含有する「厚型」パッチであった。パッチ適用160時間にわたる血漿中レベルを図6に再現し、そして実施例3のパッチの薬物動態と比較する。図7は、正規化経時的血漿中レベルをプロットし、ここでもやはり実施例3のパッチと比較する。
【0083】
実施例7--溶解度再結晶化試験
各ポリマー中に異なる薬物濃度を有するパッチを製造することによって、ポリマー中の薬物溶解度を測定するための再結晶化試験を行った。製造後、得られた積層体には非溶解薬物はなかった。打ち抜きによって積層体からパッチを得た。単独のパッチを、光及び湿分に対して絶対的に密な複合材料から成る4辺シーリング袋内に保存し、また25℃/60%RHで保存するか、又は40℃/75%RHの人工気象室内にシールしない状態で保存した。1、2及び4週の保存後に、パッチの結晶を視覚的且つ巨視的に分析した。結晶の時間、量、及びサイズを評価した。40℃/75%RHのストレス下で4週間が経過した後に結晶を産出する濃度は、溶解度を上回ると判定され、40℃/75%RHのストレス下で4週間が経過した後に結晶が現れない次に低い濃度は、溶解度を下回ると判定された。溶解度は、これら2つの薬物負荷濃度の間に存在することが見極められた。結果を表Fに報告する。
【0084】
【表7】
【0085】
実施例8--スフェンタニル・パッチの複数回投与生体利用可能性試験
72時間毎に交換されるスフェンタニル経皮パッチの安全性、耐容性、及び薬物動態を調査するための単一施設、三回投与、オープンラベル試験を、並列グループのデザインを用いて行った。図8は、7日間にわたる健常ボランティア(n=7)の第1相複数回投与生体利用可能性試験における、0.625mgのスフェンタニル塩基を含有する本発明に従って構成された2.5cm2パッチに関する経時的in vivo血漿中レベルを示すグラフである。他の動態変数を下記表F及びGに報告する。
【0086】
【表8】
【0087】
【表9】
【0088】
各パッチから送達された平均スフェンタニル量が0.34mgであり、この量は各パッチに対して約54%の損失に換算されることを付け加えるのは重要である。また、2.5cm2のパッチから血漿中濃度が、最小有効血漿中濃度に一旦達すると(30pg/ml)、パッチが3日毎に再投与される限り、30pg/mlの最小有効血漿中濃度を下回ることは決してない。
【0089】
第3パッチ投与中の平均血漿中濃度は、定常状態に達した後、53.8pg/mLであった。Fisher他(2003), Anesthesiology 99(4): 929-37で報告された浸透圧ポンプに基づいて、1mcg/時間のスフェンタニルの定常状態送達が、約15.2pg/mlの平均血漿中濃度をもたらすと想定することができる。この試験で観察された53.8pg/mlの平均血漿中濃度に基づいて、本発明の2.5cm2のパッチは約3.5mcg/時間の定常送達速度を達成すると考えられる。
【0090】
実施例9--目標スフェンタニル・レベルを達成するための経皮送達速度の計算
持続的鎮痛に必要となる最小レベルで始めて、種々の目標スフェンタニル血漿中レベルを達成するために必要とされる理論上のスフェンタニル経皮送達速度を見極めるために、計算を行い、効果的な最小鎮痛レベル(すなわち30pg/ml)を達成するために必要とされる送達速度が0.050mcg/kg/時間であることが見極められた(パッチからの生体利用可能性が100%であることを想定する)。この値は70kgの成人に対して3.5mcg/時間に等しい。最小パッチ・サイズが5cm2である場合、表Hは目標経皮送達速度及びスフェンタニル血漿中レベルを提示することになる。
【0091】
【表10】
【0092】
これらの予想とは逆に、本発明によるパッチの3.5mcg/時間の送達は実際には、53.8pg/mlの定常状態血漿中濃度を達成することができる。
【0093】
この出願全体を通して、種々の刊行物が参照される。これらの刊行物の開示内容全体を、本発明が関連する技術分野の現状をより完全に記述するために、参考として本明細書中に引用する。本発明の範囲又は思想から逸脱することなしに、種々の改変及び変更を本発明に加え得ることは当業者には明らかである。本明細書の考察及び本明細書中に開示された本発明の実施から、本発明の他の実施態様が当業者には明らかになる。本明細書及び例が単に一例と見なされ、本発明の真の範囲及び思想は添付の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、本発明に従って構成された付着性マトリックス・パッチを示す頂面図である。
【図2】図2は、好ましい3層構造を示す、本発明に従って構成された付着性マトリックス・パッチを示す側方斜視図である。
【図3】図3は、7日間にわたる健常ボランティア(n=6)の第1相単回投与生体利用可能性試験における、0.625mgのスフェンタニル塩基を含有する本発明に従って構成された2.5cm2パッチに関する経時的in vivo血漿中レベルを示すグラフである。
【図4】図4は、2つの異なるパッチ:(1)0.625mgのスフェンタニル塩基を含有する本発明に従って構成された2.5cm2パッチ、及び(2)25mcg/時間の公称フラックス速度を有するDuragesic(登録商標)フェンタニル・パッチ、のそれぞれのパッチに関するCmaxを100%として正規化された、経時的in vivo血漿中レベルを示すグラフによる比較である。スフェンタニル・パッチは12時間目にTmaxを示し、フェンタニル・パッチは24時間目にTmax示す。
【図5】図5は、図4に示した2つのパッチに関するCmaxの変動係数(CV)を示すグラフによる比較である。スフェンタニル・パッチは、下側の線で示され、フェンタニル・パッチは上側の線で示されている。
【図6】図6は、3つの異なるパッチ:(1)0.625mgのスフェンタニル塩基を含有する本発明に従って構成された2.5cm2パッチ、(2)0.91mgのスフェンタニル塩基を含有するPCT国際特許出願公開第WO2006/047362号パンフレットに従って構成された2.0cm2パッチ、及び(3)1.7mgのスフェンタニル塩基を含有するPCT国際特許出願公開第WO2006/047362号パンフレットに従って構成された2.0cm2パッチ、に関する経時的in vivo血漿中レベルを示すグラフによる比較である。
【図7】図7は、図6に示されたのと同じ3種のパッチに関する経時的in vivo血漿中レベルを、パッチの適用面積を基準として正規化した状態で示すグラフによる比較である。
【図8】図8は、3日ごとに新しいパッチが適用される健常ボランティア(n=7)の第1相複数回投与生体利用可能性試験における、0.625mgのスフェンタニル塩基を含有する本発明に従って構成された2.5cm2パッチに関する第3投与期間の経時的in vivo血漿中レベルを示すグラフである。
【図9】図9は、3日ごとに新しいパッチが適用される図8に示した第1相複数回投与生体利用可能性試験における、0.625mgのスフェンタニル塩基を含有する本発明に従って構成された2.5cm2パッチに関する経時的in vivo血漿中レベルの変動係数を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 少なくとも3日間の第1期間にわたって、疼痛の治療を必要とする患者の皮膚上の第1部位に、第1スフェンタニル負荷を有する第1スフェンタニル・パッチ・システムを付着させ;そして
b) 前記第1スフェンタニル・パッチ・システムが12ng/(ml・(mg/時間))を上回る正規化Cmaxを実証する規定速度で、前記第1パッチ・システムから前記患者へスフェンタニルを送達する
ことを含んでなる、治療方法。
【請求項2】
a) 少なくとも3日間の第1期間にわたって、疼痛の治療を必要とする患者の皮膚上の第1部位に、第1スフェンタニル負荷を有する第1スフェンタニル・パッチ・システムを付着させ;そして
b) 前記第1スフェンタニル・パッチ・システムが1.4×10-5時間/mlを上回る、平均血漿中濃度を規定定常状態速度で割り算した値を達成する前記規定速度で、前記第1パッチ・システムから前記患者へスフェンタニルを送達する
ことを含んでなる、治療方法。
【請求項3】
a) 少なくとも3日間の第1期間にわたって、疼痛の治療を必要とする患者の皮膚上の第1部位に、第1スフェンタニル負荷を有する第1スフェンタニル・パッチ・システムを付着させ;そして
b) 前記第1スフェンタニル・パッチ・システムが18時間以下の80% Tmaxを実証する規定速度で、前記第1パッチ・システムから前記患者へスフェンタニルを送達する
ことを含んでなる、治療方法。
【請求項4】
a) 少なくとも3日間の第1期間にわたって、疼痛の治療を必要とする患者の皮膚上の第1部位に、第1スフェンタニル負荷を有する第1スフェンタニル・パッチ・システムを付着させ;そして
b) 前記第1スフェンタニル・パッチ・システムが0.12ng/ml・mg以上の負荷相対Cmaxを実証する規定速度で、前記第1パッチ・システムから前記患者へスフェンタニルを送達する
ことを含んでなる、治療方法。
【請求項5】
前記第1期間が3日間である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記パッチ・システムが順次、取り外され、そしてそれぞれが前記第1スフェンタニル負荷を有する連続するパッチ・システムによって置き換えられると、前記規定速度が定常状態フラックス速度を構成する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1スフェンタニル・パッチ・システムが1.0×10-5時間/mlを上回る、平均血漿中濃度を公称フラックスで割り算した値を達成する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1スフェンタニル・パッチ・システムが、順序において第1のパッチ・システムであり、前記患者が、n・90mg/日の経口モルヒネに対して等効力の既存オピオイド需要を有しており、前記第1パッチ・システムが、n・(3.5±0.5)mcg/時間のスフェンタニルを送達し、nは整数1〜5である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1パッチ・システムが、14、16、又は18ng/(ml・(mg/時間))を上回る正規化Cmaxを実証する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1パッチ・システムが16、14又は12時間以下の80% Tmaxを実証する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1パッチ・システムが24、22、20又は18時間以下のTmaxを実証する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1パッチ・システムが、10時間未満の50% Tmax、及び10時間未満のパッチ除去後t1/2を含んでなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1パッチ・システムが0.14、0.16、0.18、又は0.20ng/ml・mg以上の負荷相対Cmaxを実証する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1パッチ・システムが、Cmaxに達した後、そして前記第1期間の終了前に、前記Cmaxよりも65%、60%、55%又は50%低いスフェンタニル血漿中濃度を生成する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1パッチ・システムが、前記第1期間中、前記初期スフェンタニル負荷の65、70又は75重量%以上を前記患者に送達する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1パッチ・システムが、0.01、0.02、0.03ng/ml・cm2以上の標準化Cmaxを実証する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1パッチ・システムが、n・(3.5±0.5)mcg/時間のin vivoフラックス速度を有し、nは整数1、2、3、4又は5である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1パッチ・システムが、2.0±0.5mcg/時間・cm2の標準化in vivoフラックス速度を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記疼痛が、持続性の中度から重度の慢性疼痛である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記疼痛が急性である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記患者がオピオイド耐性である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記スフェンタニルが、約0.1〜約0.5mg/cm2の濃度で前記第1パッチ・システム中に存在する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記第1パッチ・システムはマトリックスを含んでなり、そして前記マトリックスは約2〜約4重量%のスフェンタニル塩基を含んでなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記第1パッチ・システムはマトリックスを含んでなり、そして前記スフェンタニルは前記マトリックス中にその溶解限度未満で存在している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1期間が前記初期期間であり、前記患者が前記初期期間中に不十分な疼痛コントロールを経験し、該方法がさらに、少なくとも3日間の第2期間にわたって、前記第1期間後に前記患者の皮膚に第2スフェンタニル・パッチ・システムを付着させることを含んでなり、前記第1及び第2パッチ・システムが、同一の組成及びサイズによって定義される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記第1期間が前記初期期間であり、前記患者が前記初期期間中に不十分な疼痛コントロールを経験し、該方法がさらに、少なくとも3日間の第2期間にわたって、前記第1期間後に前記患者の皮膚に第2スフェンタニル・パッチ・システムを付着させることを含んでなり、前記第1及び第2パッチ・システムが、同一の組成及び異なるサイズによって定義される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記第1スフェンタニル・パッチ・システムは、50%、40%、30%、又は20%以下の変動係数を有するCmaxを実証する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記第1スフェンタニル・パッチ・システムは、表面積が1.75、3.5、5.25、7.0又は8.75の1つ又は2つ以上のスフェンタニル・パッチを含んでなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記スフェンタニル・パッチ・システムがグリセロリン酸カルシウムを含んでなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
スフェンタニル又はその類似体を含んでなる経皮パッチであって:
a) 前記パッチが、可撓性保護カバーと、前記保護カバーとは反対側に付着性表面を有する中間活性層と、前記付着性表面に隣接する取り外し可能なカバーとを含んでなり、そして
b) 前記パッチ・システムが、12ng/(ml・(mg/時間))を上回る正規化Cmaxを実証する、
前記経皮パッチ。
【請求項31】
スフェンタニル又はその類似体を含んでなる経皮パッチであって:
a) 前記パッチが、可撓性保護カバーと、前記保護カバーとは反対側に付着性表面を有する中間活性層と、前記付着性表面に隣接する取り外し可能なカバーとを含んでなり、そして
b) 前記パッチが、平均定常状態血漿中濃度及び平均定常状態in vivoフラックスを達成し;
c) 前記平均定常状態血漿中濃度を前記平均定常状態in vivoフラックスで割り算した値が、1.4×10-5時間/mlを上回る、
前記経皮パッチ。
【請求項32】
スフェンタニル又はその類似体を含んでなる経皮パッチであって:
a) 前記パッチが、可撓性保護カバーと、前記保護カバーとは反対側に付着性表面を有する中間活性層と、前記付着性表面に隣接する取り外し可能なカバーとを含んでなり、そして
b) 前記パッチ・システムが、18時間以下の80% Tmaxを実証する、
前記経皮パッチ。
【請求項33】
スフェンタニル又はその類似体を含んでなる経皮パッチであって:
a) 前記パッチが、可撓性保護カバーと、前記保護カバーとは反対側に付着性表面を有する中間活性層と、前記付着性表面に隣接する取り外し可能なカバーとを含んでなり、そして
b) 前記パッチ・システムが、0.12ng/ml・mg以上の負荷相対Cmaxを実証する、
前記経皮パッチ。
【請求項34】
a) 可撓性保護カバーと、
b) i) スフェンタニル又はその類似体;
ii) 非サッカライド多価アルコールリン酸エステル、又は医薬的に許容し得るその塩;及び
iii) 前記保護カバーとは反対側の付着性表面
を含んでなる中間活性層と、
c) 前記付着性表面に隣接する取り外し可能なカバー
とを含んでなる、経皮パッチ。
【請求項35】
前記非サッカライド多価アルコールリン酸エステルがグリセロリン酸カルシウムである、請求項34に記載の経皮パッチ。
【請求項36】
a) 可撓性保護カバーと、
b) i) スフェンタニル又はその類似体;
ii) 50重量%を上回るポリイソブチレン;及び
iii) 前記保護カバーとは反対側の付着性表面
を含んでなる中間活性層と、
c) 前記付着性表面に隣接する取り外し可能なカバー
とを含んでなる、経皮パッチ。
【請求項37】
前記ポリイソブチレンが:
a) 分子量が100,000g/mol未満の低分子量ポリイソブチレン;及び
b) 分子量が650,000g/molを上回る高分子量ポリイソブチレン
を含んでなる、請求項36に記載の経皮パッチ。
【請求項38】
前記中間層がさらにポリブテンを含んでなり、ポリイソブチレンとポリブテンとの重量比が約2:1〜約5:1である、請求項36に記載の経皮パッチ。
【請求項39】
基準パッチに対して生物学的に等価の経皮パッチであって、前記基準バッチが:
a) 1.0重量部の高分子量ポリブテン、5.0重量部の低分子量ポリイソブチレン、及び2.0重量部のポリブテンをヘキサン中に溶解することにより、付着性混合物を形成し;
b) エチルアセテート中に0.25重量部のスフェンタニル塩基を溶解することにより、薬物混合物を形成し;
c) 前記薬物混合物中に0.25重量部のグリセロリン酸カルシウムを混合することにより、CGP混合物を形成し;
d) 前記付着性混合物と前記CGP混合物とを混合することにより混合液を形成し、そして前記混合液を1時間にわたって攪拌し;
e) 前記混合液を、約0.25mg/cm2のスフェンタニル濃度で剥離ライナー上にコーティングし;
f) 前記コーティングされたライナーを乾燥させ;そして
g) 前記乾燥済みのコーティングされたライナーに裏当てフォイルを被着する、
ことを含んでなる方法によって形成されたマトリックス・マッチである、
前記経皮パッチ。
【請求項1】
a) 少なくとも3日間の第1期間にわたって、疼痛の治療を必要とする患者の皮膚上の第1部位に、第1スフェンタニル負荷を有する第1スフェンタニル・パッチ・システムを付着させ;そして
b) 前記第1スフェンタニル・パッチ・システムが12ng/(ml・(mg/時間))を上回る正規化Cmaxを実証する規定速度で、前記第1パッチ・システムから前記患者へスフェンタニルを送達する
ことを含んでなる、治療方法。
【請求項2】
a) 少なくとも3日間の第1期間にわたって、疼痛の治療を必要とする患者の皮膚上の第1部位に、第1スフェンタニル負荷を有する第1スフェンタニル・パッチ・システムを付着させ;そして
b) 前記第1スフェンタニル・パッチ・システムが1.4×10-5時間/mlを上回る、平均血漿中濃度を規定定常状態速度で割り算した値を達成する前記規定速度で、前記第1パッチ・システムから前記患者へスフェンタニルを送達する
ことを含んでなる、治療方法。
【請求項3】
a) 少なくとも3日間の第1期間にわたって、疼痛の治療を必要とする患者の皮膚上の第1部位に、第1スフェンタニル負荷を有する第1スフェンタニル・パッチ・システムを付着させ;そして
b) 前記第1スフェンタニル・パッチ・システムが18時間以下の80% Tmaxを実証する規定速度で、前記第1パッチ・システムから前記患者へスフェンタニルを送達する
ことを含んでなる、治療方法。
【請求項4】
a) 少なくとも3日間の第1期間にわたって、疼痛の治療を必要とする患者の皮膚上の第1部位に、第1スフェンタニル負荷を有する第1スフェンタニル・パッチ・システムを付着させ;そして
b) 前記第1スフェンタニル・パッチ・システムが0.12ng/ml・mg以上の負荷相対Cmaxを実証する規定速度で、前記第1パッチ・システムから前記患者へスフェンタニルを送達する
ことを含んでなる、治療方法。
【請求項5】
前記第1期間が3日間である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記パッチ・システムが順次、取り外され、そしてそれぞれが前記第1スフェンタニル負荷を有する連続するパッチ・システムによって置き換えられると、前記規定速度が定常状態フラックス速度を構成する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1スフェンタニル・パッチ・システムが1.0×10-5時間/mlを上回る、平均血漿中濃度を公称フラックスで割り算した値を達成する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1スフェンタニル・パッチ・システムが、順序において第1のパッチ・システムであり、前記患者が、n・90mg/日の経口モルヒネに対して等効力の既存オピオイド需要を有しており、前記第1パッチ・システムが、n・(3.5±0.5)mcg/時間のスフェンタニルを送達し、nは整数1〜5である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1パッチ・システムが、14、16、又は18ng/(ml・(mg/時間))を上回る正規化Cmaxを実証する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1パッチ・システムが16、14又は12時間以下の80% Tmaxを実証する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1パッチ・システムが24、22、20又は18時間以下のTmaxを実証する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1パッチ・システムが、10時間未満の50% Tmax、及び10時間未満のパッチ除去後t1/2を含んでなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1パッチ・システムが0.14、0.16、0.18、又は0.20ng/ml・mg以上の負荷相対Cmaxを実証する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1パッチ・システムが、Cmaxに達した後、そして前記第1期間の終了前に、前記Cmaxよりも65%、60%、55%又は50%低いスフェンタニル血漿中濃度を生成する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1パッチ・システムが、前記第1期間中、前記初期スフェンタニル負荷の65、70又は75重量%以上を前記患者に送達する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1パッチ・システムが、0.01、0.02、0.03ng/ml・cm2以上の標準化Cmaxを実証する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1パッチ・システムが、n・(3.5±0.5)mcg/時間のin vivoフラックス速度を有し、nは整数1、2、3、4又は5である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1パッチ・システムが、2.0±0.5mcg/時間・cm2の標準化in vivoフラックス速度を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記疼痛が、持続性の中度から重度の慢性疼痛である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記疼痛が急性である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記患者がオピオイド耐性である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記スフェンタニルが、約0.1〜約0.5mg/cm2の濃度で前記第1パッチ・システム中に存在する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記第1パッチ・システムはマトリックスを含んでなり、そして前記マトリックスは約2〜約4重量%のスフェンタニル塩基を含んでなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記第1パッチ・システムはマトリックスを含んでなり、そして前記スフェンタニルは前記マトリックス中にその溶解限度未満で存在している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1期間が前記初期期間であり、前記患者が前記初期期間中に不十分な疼痛コントロールを経験し、該方法がさらに、少なくとも3日間の第2期間にわたって、前記第1期間後に前記患者の皮膚に第2スフェンタニル・パッチ・システムを付着させることを含んでなり、前記第1及び第2パッチ・システムが、同一の組成及びサイズによって定義される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記第1期間が前記初期期間であり、前記患者が前記初期期間中に不十分な疼痛コントロールを経験し、該方法がさらに、少なくとも3日間の第2期間にわたって、前記第1期間後に前記患者の皮膚に第2スフェンタニル・パッチ・システムを付着させることを含んでなり、前記第1及び第2パッチ・システムが、同一の組成及び異なるサイズによって定義される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記第1スフェンタニル・パッチ・システムは、50%、40%、30%、又は20%以下の変動係数を有するCmaxを実証する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記第1スフェンタニル・パッチ・システムは、表面積が1.75、3.5、5.25、7.0又は8.75の1つ又は2つ以上のスフェンタニル・パッチを含んでなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記スフェンタニル・パッチ・システムがグリセロリン酸カルシウムを含んでなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
スフェンタニル又はその類似体を含んでなる経皮パッチであって:
a) 前記パッチが、可撓性保護カバーと、前記保護カバーとは反対側に付着性表面を有する中間活性層と、前記付着性表面に隣接する取り外し可能なカバーとを含んでなり、そして
b) 前記パッチ・システムが、12ng/(ml・(mg/時間))を上回る正規化Cmaxを実証する、
前記経皮パッチ。
【請求項31】
スフェンタニル又はその類似体を含んでなる経皮パッチであって:
a) 前記パッチが、可撓性保護カバーと、前記保護カバーとは反対側に付着性表面を有する中間活性層と、前記付着性表面に隣接する取り外し可能なカバーとを含んでなり、そして
b) 前記パッチが、平均定常状態血漿中濃度及び平均定常状態in vivoフラックスを達成し;
c) 前記平均定常状態血漿中濃度を前記平均定常状態in vivoフラックスで割り算した値が、1.4×10-5時間/mlを上回る、
前記経皮パッチ。
【請求項32】
スフェンタニル又はその類似体を含んでなる経皮パッチであって:
a) 前記パッチが、可撓性保護カバーと、前記保護カバーとは反対側に付着性表面を有する中間活性層と、前記付着性表面に隣接する取り外し可能なカバーとを含んでなり、そして
b) 前記パッチ・システムが、18時間以下の80% Tmaxを実証する、
前記経皮パッチ。
【請求項33】
スフェンタニル又はその類似体を含んでなる経皮パッチであって:
a) 前記パッチが、可撓性保護カバーと、前記保護カバーとは反対側に付着性表面を有する中間活性層と、前記付着性表面に隣接する取り外し可能なカバーとを含んでなり、そして
b) 前記パッチ・システムが、0.12ng/ml・mg以上の負荷相対Cmaxを実証する、
前記経皮パッチ。
【請求項34】
a) 可撓性保護カバーと、
b) i) スフェンタニル又はその類似体;
ii) 非サッカライド多価アルコールリン酸エステル、又は医薬的に許容し得るその塩;及び
iii) 前記保護カバーとは反対側の付着性表面
を含んでなる中間活性層と、
c) 前記付着性表面に隣接する取り外し可能なカバー
とを含んでなる、経皮パッチ。
【請求項35】
前記非サッカライド多価アルコールリン酸エステルがグリセロリン酸カルシウムである、請求項34に記載の経皮パッチ。
【請求項36】
a) 可撓性保護カバーと、
b) i) スフェンタニル又はその類似体;
ii) 50重量%を上回るポリイソブチレン;及び
iii) 前記保護カバーとは反対側の付着性表面
を含んでなる中間活性層と、
c) 前記付着性表面に隣接する取り外し可能なカバー
とを含んでなる、経皮パッチ。
【請求項37】
前記ポリイソブチレンが:
a) 分子量が100,000g/mol未満の低分子量ポリイソブチレン;及び
b) 分子量が650,000g/molを上回る高分子量ポリイソブチレン
を含んでなる、請求項36に記載の経皮パッチ。
【請求項38】
前記中間層がさらにポリブテンを含んでなり、ポリイソブチレンとポリブテンとの重量比が約2:1〜約5:1である、請求項36に記載の経皮パッチ。
【請求項39】
基準パッチに対して生物学的に等価の経皮パッチであって、前記基準バッチが:
a) 1.0重量部の高分子量ポリブテン、5.0重量部の低分子量ポリイソブチレン、及び2.0重量部のポリブテンをヘキサン中に溶解することにより、付着性混合物を形成し;
b) エチルアセテート中に0.25重量部のスフェンタニル塩基を溶解することにより、薬物混合物を形成し;
c) 前記薬物混合物中に0.25重量部のグリセロリン酸カルシウムを混合することにより、CGP混合物を形成し;
d) 前記付着性混合物と前記CGP混合物とを混合することにより混合液を形成し、そして前記混合液を1時間にわたって攪拌し;
e) 前記混合液を、約0.25mg/cm2のスフェンタニル濃度で剥離ライナー上にコーティングし;
f) 前記コーティングされたライナーを乾燥させ;そして
g) 前記乾燥済みのコーティングされたライナーに裏当てフォイルを被着する、
ことを含んでなる方法によって形成されたマトリックス・マッチである、
前記経皮パッチ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2009−534343(P2009−534343A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505791(P2009−505791)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003498
【国際公開番号】WO2007/121949
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(508315202)ラブテック ゲゼルシャフト フュール テクノロジシェ フォルシュンク ウント エントビックルンク ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003498
【国際公開番号】WO2007/121949
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(508315202)ラブテック ゲゼルシャフト フュール テクノロジシェ フォルシュンク ウント エントビックルンク ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】
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